カジノ解禁に向けた推進法案が超党派の議員連盟によってまとめられ、日本で合法的なカジノ運営が現実味を帯びてきた。自民党は日本維新の会などと共同で12月6日の今国会会期末までの提出をめざすが、与党・公明党が慎重な姿勢を強めている。
カジノの解禁をめざす超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(会長・細田博之自民党幹事長代行)は11月12日の総会でカジノを中心とした複合型リゾート施設の整備を政府に促す推進法案を決定した。MSN産経ニュースなどによると、推進法案は、観光や地域経済の振興のため、複合型リゾート施設整備の推進本部を内閣に設けると規定。許可を受けた民間事業者が国の認定を受けた地域でカジノをリゾート施設を設置・運営することができるとしている。
また議連は、運営にあたる業者を免許制とするほか、違法行為を取り締まる専従の「査察官」をおいて施設の立ち入り権限や逮捕特権を与えることなどを盛り込んだ、カジノ設置の制度設計を定める実施法案の骨格をまとめている。推進法の施行後1年以内を目標に実施法案の整備をめざす。2020年の東京オリンピックに向け、外国人観光客誘致につなげたい考えだ。
■カジノ実施法案の骨格
・カジノを置く区域は、国が地方自治体の申請にもとづいて指定
・内閣府の外局に「カジノ管理委員会」を設置。参入する民間事業者の主要株主、経営者らには委員会からの免許取得を義務づける
・カジノ管理委員会に査察官を置き、司法警察官として逮捕特権を付与
・民間事業者は納付金を国に納める。カジノ施設への入場料を徴収できる
・マネーロンダリング(資金洗浄)対策として、現金やチップを使わない制度導入を検討
・賭博依存症対策の機関を創設
(朝日新聞デジタル「カジノ法案、議連が骨格 運営業者は免許制、査察官配置」2013/11/7 05:32)
時事ドットコムによると、自民党は11月29日の総務会でこの推進法案を了承。日本維新の会などと共同で今国会に議員立法で提出し、来年の通常国会での成立を目指す考えだという。
■慎重論強い公明党
超党派の議員連盟には自民、公明、民主、維新、みんな、生活などの国会議員約170人が登録。しかし、民主・公明党内にはカジノ解禁への慎重論があり、共同提出をするかどうかは不透明な状況だ。公明党の山口那津男代表はカジノ解禁について「国民の理解が十分得られている状況ではない」と指摘。井上義久幹事長は観光振興について「世界に誇る文化歴史遺産があり、十分活用するのが本筋ではないか」とし、「わたしは慎重だ」と強調している。
公明党の山口那津男代表は18日、公明党内の合意が得られるかどうかについて「限られた会期内で提出や推進にコンセンサスが出来上がるとは必ずしも思っていない」指摘。カジノ解禁についても「国民の理解が十分得られている状況ではない」との見方を示した。
(ブルームバーグ 「超党派のカジノ法案:自民も了承、来週国会提出へ意欲-野田総務会長」2013/11/29 15:29)
公明党の井上義久幹事長は29日の記者会見で、カジノを中心とした複合型リゾート施設の整備を政府に促す推進法案について「私は慎重だ」と述べた。法案が観光振興を目的としていることに「世界に誇る文化や歴史などの遺産を十分に活用するのが観光振興の本筋だ」と指摘した。井上氏は会見で「今国会中に党内議論の時間を取るのは厳しい」と述べた。
(MSN産経ニュース「カジノ法案、「私は慎重だ」公明・井上幹事長」2013.11.29 12:36)
この井上氏の見解に関して、野田聖子・自民党総務会長は「公明党議員も積極的だった。個人的な思いの違いではないか。理解をいただいて成就したい」と述べ、公明党の協力を求めたという。
■経済界、地方から高まる期待
大阪商業大学の佐和良作教授の試算では、日本にカジノが設立された場合の経済波及効果は最大で約7兆7千億円。MSN産経ニュースによると、カジノ候補地の一つとされる東京・台場では、フジテレビと三井不動産、鹿島などによる統合型リゾートの開発計画案がすでに出ており、経済界からは「ビジネスが広がる」などと歓迎の声が上がる。
海外のカジノにスロットマシンなどを納入するコナミは、今後「ビジネスチャンスが広がる」とみる。セガサミーホールディングスは韓国でカジノを併設した複合リゾート開発に参画、日本でも「運営ノウハウを提供したい」という。
JTBは、カジノが「国際会議や団体旅行を誘致する際、動機づけの一つとなる可能性もある」と訪日外国人増加のきっかけになり得るとみる。
(MSN産経ニュース「経済界、カジノに熱視線 波及効果7兆7000億円試算も」 2013.11.12 22:50 )
カジノによる国内外からの観光客増加を経済活性化の切り札にしたい地方都市も、誘致を本格化させる。ロイターによると、北海道では小樽市、苫小牧市、釧路市が候補地としてカジノ誘致に積極的に活動している。海外のカジノ運営会社は大都市だけでなく、地方でのビジネス展開も視野にいれているようだ。
米カジノホテルチェーン、シーザーズ・エンターテインメント(CZR.O: 株価, 企業情報, レポート)の国際部長、スティーブン・タイト氏は、大都市から北海道の山間の温泉地まで、日本中どこにでもカジノホテルを運営することができると話す。そのシーザーズの幹部がすでに釧路市を訪問。カジノ建設の可能性を探った。
これに対し、釧路市関係者は周辺の温泉地にカジノを建設することを提案しており、カジノ誘致によりアイヌ民族文化を知ってもらういい機会にもなると、誘致に意欲を高めている。
(ロイター「アングル:地方から相次ぐカジノ誘致、観光への波及期待」 2013/11/28 21:56)
ロイターは、一部の政治家や有識者は大都市と地方のそれぞれに計4カ所程度のカジノを建設しその後、段階的に数を増やしていくのではないかという見通しを示していると伝えている。
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