菅義偉官房長官は11月29日、中央省庁の2015年度の国家公務員採用について、全体、総合職ともに女性の割合を30%以上に引き上げる方針を決めた。「女性の活用」を成長戦略に掲げる安倍政権の姿勢を明確にし、民間にも積極的な女性の採用や登用を促すのが狙いだという。NHKニュースなどが報じた。
菅官房長官は、29日開かれた事務次官連絡会議で、平成27年度の国家公務員の採用者に占める女性の割合を30%以上に引き上げるよう指示しました。このうち、中央省庁の政策の企画・立案を担う「総合職」についても、同じく女性の割合を30%以上とするよう求めました。
(NHKニュース『国家公務員「女性採用30%以上に」』より 2013/11/29 15:59)
加藤勝信官房副長官が、菅官房長官の指示を各省庁に伝達。採用だけでなく、女性が働きやすい職場環境の整備についても、取り組み状況を報告するように求めたという。
加藤勝信官房副長官は同日の事務次官連絡会議で、女性の採用数増に関する菅義偉官房長官名の指示を各府省に伝達。家庭・子育てとキャリアの両立を目指した職場の環境についても各府省が整備を急ぎ、取り組み状況を年内に杉田和博官房副長官に報告することも求めた。
(時事ドットコム「女性の採用、30%以上に=15年度の国家公務員-政府」より 2013/11/29 16:17)
■安倍首相、女性初の首相秘書官を任命
また、菅官房長官は同日午前、安倍首相の秘書官に経産省審議官の山田真貴子氏(写真)を起用すると発表した。女性の首相秘書官は、戦前を含めて初めて。山田氏は、内閣の広報や女性政策などを担当する。
菅義偉官房長官は29日午前の記者会見で、安倍晋三首相の秘書官に、経済産業省大臣官房審議官(情報技術戦略担当)の山田真貴子氏(53)を同日付で起用すると発表した。
(朝日新聞デジタル「首相秘書官に女性初起用 経産省審議官の山田真貴子氏」より 2013/11/29 12:58)
■ウーマノミクス、「女性の活用」は安倍首相の成長戦略
今後少子高齢化が進み、労働力の不足懸念される日本。安倍首相は、成長戦略の中核に「女性の活用」を掲げている。
ゴールドマン・サックス証券のチーフストラテジスト、キャシー・松井氏は、以下のような「ウーマノミクス(Womenomics)」を提唱。女性の就業率の上昇による経済効果を指摘している。
2055年には出生数が2005年の40%に低下し、高齢者の割合が2倍に拡大する一方、生産年齢人口は半分に縮小する見通しで、総人口は30%程度の減少が予想される。
女性の就業率は過去最高の 60%に達しているが、依然として大幅な上昇余地が残されている。第一子出産後に退職する女性は全体の 7 割にのぼり、大卒女性の就業率は 65%にすぎない。
試算では、日本の女性の就業率(2009 年現在 60%)が男性と同水準(80%)まで向上すれば、就業者は 820 万人増加し、日本の GDP は 15%も押し上げられる可能性がある。
(ゴールドマン・サックス「ウーマノミクス、待ったなし」より 2010/10)
安倍首相は、9月の国連総会でもこの「ウーマノミクス」に言及し、「女性にとって働きやすい環境を整え、女性の労働機会、活動の場を充実させることは、今や日本にとって、選択の対象となりません。まさしく、焦眉の課題」だと訴えた。
■働く女性は増えているが、管理職の比率は低い日本
安倍首相は、女性の管理職の割合についても以下のような目標を掲げている。
安倍晋三首相は社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする目標を掲げている。
(Bloomberg「村木厚子氏:お茶くみから始まり官僚トップへ、拘置所では150冊読破」より 2013/10/24 12:11)
しかし、人事院によれば、2013年度の国家公務員に置ける女性の採用実績は、26.8%。管理職以上に占める女性の割合も、各省庁平均2.6%と極めて低い。
また、厚生労働省の労働力調査によれば、働く女性の割合は増加しているものの、第一子を出産後仕事を続ける女性は4割にとどまり、管理職の比率も低い。非正規雇用の割合も高いという。
ダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)は10月に発表した男女平等の達成レベルを経済、政治、健康、教育の4分野から評価した「国際男女格差レポート2013」によれば、日本は136カ国中105位。教育レベルが高いにも関わらず、女性の議員や管理職の比率が低いことが指摘されている。安倍首相の目指す目標へのハードルは高い。
■女性が働きやすい環境づくり、新たなステージへ
しかし、この35年間で女性の働く環境は大きく変化している。
厚生労働省の村木厚子事務次官(57)は、1978年に幹部候補生として旧労働省に入省。当時は、毎朝20人から30人の同僚にお茶を用意し、部屋の掃除もしていたという。村木氏にお茶くみをさせるかどうかについても、大激論がなされたという。その当時と比べれば、この30年間で女性官僚を取り巻く環境は大きく変わったと村木氏は語っている。
入省当時は「うちは女性はいらない。新入生のうちから男を自分のところにください」という課長が多かったが、10年ほど経過すると「とても出来の悪い男性をもらうよりはできのよい女性をください」となり、さらに10年後は「どっちでもいいからとにかく一番出来のいい子をうちにください」と言う課長が多くなったという。
(Bloomberg「村木厚子氏:お茶くみから始まり官僚トップへ、拘置所では150冊読破」より 2013/10/24 12:11)
また、25年に渡り日本で働いてきたフィンランド人の坂根シルック氏も、若い男性の育児への関心が高まったと感じている。
「男性同士が、スマートフォンやパソコンにある子供の写真を見せ合っているのを見ると、うれしくなりますね。今日は『奥さんが残業だから』といって、17時に退社して保育園に迎えにいく男性も見かけるようになりました。本当に時代は変わったんだなと、感慨深いです」
(ハフィントンポスト「坂根シルックさん「フィンランド流の子育てと働きかた」女性の80%以上がフルタイムの国【Womans'Story】」より 2013/10/27 08:55)
このように「女性の活用」は、日本でもゆっくりと進んでいる。仕事や子育てをしやすい環境づくりが「女性の活用」の成否をにぎっている。政府や民間の育児に対する意識のさらなる向上や、男女ともに残業しなくてもすむ環境づくり、待機児童問題の解決など、女性が働きながら子育てしやすい社会の整備が望まれる。
※安倍首相が成長戦略の中核に掲げる「女性の活用」。女性が働きつづけるには、どのような環境の整備が望まれますか? あなたの声をお聞かせください。
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