温室効果ガス削減など、気候変動への国際的枠組み作りを協議する国連気候変動枠組条約第19回締結国会議(COP19)が11月11日から22日まで、ポーランドの首都ワルシャワで開幕する。
日本政府は新たに温室効果ガス削減目標として「05年比3・8%減」とする方針を固めている。朝日新聞デジタルは次のように伝えている。
新たなエネルギー政策が決まるまでの「暫定的な数字」(関係閣僚)として05年比3・8%減とすることで決着した。前提となる原発比率は稼働中の原発がないため「ゼロ」とした。ただ、05年比3・8%減は90年比換算で温室効果ガスが3%以上増える計算で、COP19で批判される可能性がある。
(朝日新聞デジタル「温室ガス05年比3.8%減 20年目標、各国に説明へ」2013/11/07 07:17)
COP19では、2008年から20年までの間に先進国全体で温室効果ガスを5.2%削減するという目標を定めた「京都議定書」に代わる新たな枠組みが決定する2015年までに、温室効果ガス削減や地球温暖化防止に向けた具体的な取り組みが途上国も含めて行えるかどうかがカギとなる。
京都議定書は、アメリカの離脱や中国・インドなどの新興国の経済発展がからみ、期待されたほどの成果が挙げられていない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今世紀末に地球の平均気温は最大4.8度上昇し、海面は82%上昇すると予測するなど、むしろ気候変動による温暖化が進行するのではないかという懸念が消えない。
COP19やIPCCで指摘される気候変動の影響は多岐に及ぶが、それらで言及されていない「深刻な影響」が進行しつつあるという専門家の指摘もある。
■ IPCCの報告書に記載されなかったもう一つの「脅威」
11月8日、IPCCによる地球温暖化の影響についての最新報告書草案がブロゴスフィア(ブログおよびブロガーで形成されたコミュニティ)にリークされた。草案では海氷の減少から、飢餓や猛暑による環境への脅威にさらされ穀物生産高が喪失することまで、さまざまな懸念が強調されている。
しかし、今回の報告書草案で言及されていないもう一つの懸念がある。それは、気候変動によって、長期的に持続し広範囲に蔓延する有害化学物質がもたらす大規模な環境破壊がさらに悪化する可能性があるということだ。
気候変動と有害化学物質――科学者たちに言わせると、地球環境への最大の脅威となるこの2つの要素は密接に関連しているようだ。
「我々はIPCCが設定した締め切りにぎりぎり間に合わなかった」と、ミズーリ州にあるアメリカ地質調査所コロンビア環境研究センターの生物学研究員マイケル・フーパー氏は語る。
フーパー氏は、2014年1月に発表される自身と他の科学者たちが携わった一連の研究について言及した。それは、IPCC第5次評価報告書の段階で気候変動の緩和をテーマにするIPCCの第三作業部会の検討材料から除外された後のものだ(2014年3月までにまとめられる予定の最終報告書までに変更される可能性もある)。新たな研究によると、地球温暖化によって、有機塩素系殺虫剤のような化学物質の拡散や濃度に影響を与えるかもしれないという点を強調している。同様に、気候変動が動物や人間がこうした化学物質に対する耐性を弱める可能性についても言及している。
その逆についても言及されている。地球環境が化学物質にさらされる規模が拡大すれば、ホッキョクグマや人間の赤ちゃんが極端な温度変化、暴風雨、食糧不足、そして気候変動によるさまざまな脅威に耐えられない可能性がある。
「気候変動はこうした化学物質がより毒性を高めることにもなる。そして人体により長期的に、より高濃縮に影響を及ぼすことになりそうだ」とフーパー氏は付け加えた。
■ 気候変動による経済的影響も拡大
気候変動は地球環境のみならず、地球全体の経済にも今後大きな影響を及ぼす予測がなされている。
イギリスのリスク評価会社メイプルクロフト社が10月30日に発表した「第6次気候変動脆弱性指数」によると、調査した193カ国のうち、2025年までに地球温暖化の気候変動によるリスクが高くなる国は67カ国で、世界全体の3割を占めるようになると予測している。
また、アジア開発銀行(ADB)の報告書によると、日本、中国、韓国、モンゴルのアジア4カ国は、「気候に左右されない」インフラを整備するために2050年までの間、毎年約230億ドル(約2兆2800億円)の負担増となると見込まれている。
地球環境、そして世界経済に多大な影響を及ぼずとみられる気候変動。「異常気象」「例年にない猛暑」「経験のない大雨」といった現象が日常の風景になりつつある今、もっとも見過ごしてはならない「脅威」と言えるかもしれない。
※気候変動が及ぼす地球環境、世界経済への影響について、みなさんのご意見をコメント欄にお寄せください。
※訳文を「海氷の減少から、飢餓や猛暑による環境への脅威にさらされ穀物生産高が喪失することまで」と修正しました(2013/11/10 22:25)
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