第二次世界大戦末期に「女子勤労挺身(ていしん)隊員」として、朝鮮半島から徴用され、三菱重工業の名古屋の軍需工場で働かされた韓国人女性や遺族計5人が、同社に損害賠償を求めていた訴訟で、韓国の光州地裁は1日、判決を言い渡した。原告らの個人請求権を認め、慰謝料として女性1人あたり、1.5億ウォン(約1400万円)、遺族には8千万ウォン(約740万円)を支払うように命じたという。三菱重工は控訴する方針だ。朝日新聞デジタルが報じた。
韓国では、大法院(最高裁)が昨年5月、元徴用工らの日本企業に対する個人請求権は「韓国では消滅していない」とする判断を示した。その後、三菱重工など日本企業を訴える訴訟が新たに4件起こされたが、判決は初めて。
(朝日新聞デジタル「三菱重工に賠償命令 元徴用工に請求権認定、韓国で定着 光州地裁」 2013/11/02 05:00)
戦後補償に関する訴訟で韓国の裁判所が日本企業に賠償を命じるのは3件目だ。2012年5月に、韓国の大法院(最高裁)は徴用工らの日本企業に対する個人請求権は「韓国では消滅していない」と判断。2件の関連訴訟を高裁に差し戻した。
そして、2013年7月10日、朝鮮半島の植民地時代に徴用工として強制労働をさせられたとして韓国人4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)を訴えた訴訟で、ソウル高裁は請求通り同社に韓国人4人に対し計4億ウォン(約3500万円)を支払うよう命じた。さらに、7月30日、広島の軍需工場に動員され被曝した韓国人の元徴用工5人の遺族が起こした訴訟では、釜山高裁は三菱重工に1人当たり8千万ウォン(約710万円)を支払うよう命じた。
2012年5月に大法院が2件の訴訟を高裁に差し戻して以降、三菱重工、不二越、日本製鉄を訴える訴訟が新たに4件起こされている。今回判決が下ったのはその4件のうちの1つだ。
日本政府は日韓間の財産請求権の問題は日韓請求権協定によって「完全に解決した」という立場を取っている。韓国政府も、2005年、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代には、「個人の財産権や強制動員の被害補償問題の解決金など」については、協定締結当時に日本側が拠出した3億ドルの無償経済協力に「含まれている」との見解を明示していた。
しかし、韓国政府は1日の会見では「司法手続きが進行中なので立場の表明は自制する」とだけ述べ、政府見解との食い違いをどうするか方針を示せない状況だ。
朝日新聞デジタルでは、今後も同様の集団訴訟を準備している団体もあるとして下記のように報じている。
徴用の実態を調べる韓国の政府委員会によると、日本の企業などでの「強制労務被害」は3万件を超す。新たな集団訴訟を準備している団体もある。日本政府や企業は1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で「解決済み」との立場をとるが、今後も韓国での相次ぐ提訴に対応を迫られる可能性がある。
(朝日新聞デジタル「三菱重工に賠償命令 元徴用工に請求権認定、韓国で定着 光州地裁」 2013/11/02 05:00)
菅官房長官は1日の記者会見で「日韓間の財産請求権の問題は解決済みであるという政府の一貫した立場に基づいて適切に対応していきたい」と、これまで主張してきた日本政府の見解を繰り返し強調した。
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