「スーパー高齢者の脳」80代以上でも元気な理由

ふつうは、高齢になると記憶力や思考力が減退すると考えられている。しかしそれは不可避なのだろうか?

ふつうは、高齢になると記憶力や思考力が減退すると考えられている。しかしそれは不可避なのだろうか?

年齢が80~90代であるにもかかわらず、脳の様相や記憶力で見ると数十歳も若い男女、いわゆる「super agers」(スーパー高齢者)は、新たな可能性を示す存在だ。

研究者らは長年にわたり、こうした人たちに魅了されてきた。平均的な高齢者と比べ、加齢に伴う老廃物がきわめて少なく、記憶や注意能力に関連する脳の部位の質量が大きい高齢者たちだ。

具体的には、MRIで調べると、スーパー高齢者の脳では、思考能力にとって大切な脳内の領域である前帯状皮質が50~60代の人の脳より大きいことがわかっている。さらに、記憶テストを行うと、スーパー高齢者の思考能力は、中年世代の人たちと同じくらいであることがわかるという。

シカゴにあるノースウェスタン大学・認知神経・認知症センターのエミリー・ロガルスキー氏が率いる研究チームは、スーパー高齢者に関する新しい研究のために、認知の低下が見られない高齢の志願者を募っているところだ。

今までのところ、400名を超える人々を審査し、その中から約35名を選び出している。選抜された人の中には、元神経科学者という96歳の人や、毎日1箱のタバコと晩酌を欠かさない81歳の人などがいる、とAP通信は伝えている。

ロガルスキー氏は、1年前に行った別の研究で、80歳以上の人々の中に、彼らより20~30歳若い人たちと同程度の記憶力を持っている「エリート高齢者集団」がいることを初めて明らかにした。

ロガルスキー氏によれば、このスーパー高齢者たちの大脳皮質は驚くほど活発だったという。大脳皮質は脳の最も外側にあり、記憶力、注意力、その他の思考能力を司る層だ。

高齢者の大脳皮質は他のほとんどの高齢者と比べてはるかに厚く、50~65歳の人たちと同じくらいだったという。また、スーパー高齢者はエネルギッシュで、人生を前向きに捉える傾向が強いようだ。

「通常の老化で灰白質や脳細胞の消失がよく見られることを考えれば、今回の発見は注目に値する」とロガルスキー氏は当時述べている。

さらに、ノースウェスタン大学の研究者らは2008年に、非常に優れた記憶力を持つ高齢者の脳を調べ、平均的に年を取っている人々の脳と比べて、繊維質のもつれがはるかに少ないことを発見している。

このもつれは、脳細胞の中に蓄積する「タウ蛋白質」でできており、最終的に脳細胞を殺してしまうと考えられている。高齢者の脳の中には、このもつれがある程度存在しているが、アルツハイマー病患者の脳では、その数が劇的に増えるという。

ロガルスキー氏らは、スーパー高齢者の若々しい脳の秘密を明らかにすべくさらに研究をすすめ、その知識をアルツハイマー病患者などの支援に役立てたいと考えている。

[Shelley Emling(English) 日本語版:佐藤卓/ガリレオ]

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