有名ホテルのレストランで発覚した「メニュー偽装」 法的な問題はどこにあるか?
六甲山ホテルや宝塚ホテルなど、歴史ある有名ホテルで思わぬ不祥事が発覚した。阪急阪神ホテルズが運営するホテルなどのレストラン23店舗で、「鮮魚」と表示しながら冷凍保存の魚を使用するなど「メニューの偽装」が行われていたことが判明したのだ。2006年からの7年間で延べ約8万人に提供していたという大規模なものだ。
同社が10月22日に発表した調査結果によると、「鮮魚」の誤表示のほか、「レッドキャビア」(マスの魚卵)と表示しながらトビウオの魚卵を提供していたり、「信州」のそばと表示しながら信州産でなかったり、といったケースがあり、「メニュー偽装」があった商品数は47にのぼっている。
誤表示の原因について、阪急阪神ホテルズは「景品表示法・JAS法の理解不足があった」と説明しているが、法的にはどのような問題があったといえるのだろうか。また「だまされた」格好の客は、返金を請求できるのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。
●景品表示法の「不当表示」にあたる可能性がある
「食品をめぐる表示のあり方については、農林物質の規格制定のための『JAS法』、公衆衛生のための『食品衛生法』など、さまざまな法律によって厳しい管理がなされています。そして、本件のような原材料の誤った表示については主に『不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)』の『不当表示』が問題となります」
では、「不当表示」とは、どんな表示のことをさすのだろうか。足立弁護士は、次のように説明する。
「景表法における『不当表示』とは、商品の品質その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも『著しく優良であると示す』表示であって、『不当に顧客を誘引』し、自主的で合理的な選択を阻害するおそれがあるもの、とされています。たとえば、『カシミヤ使用のカーディガン』と表記しながら、実際にはカシミヤを使っていない場合は、不当表示にあたります」
食材の場合はどうだろうか。
「食品の原材料表示についても、『実際のものより著しく優良であると示す』表示か、『不当に顧客を誘引』する表示かを基準に判断されます。ただ、魚介類は、成長段階や採れる地方によって呼び方が異なるなど判断が微妙なケースもあり、どこまで厳密な表記が必要かは、ケースバイケースで判断せざるをえません」
もしレストランのメニューが「不当表示」といえる場合、客は返金を求めることができるのか。
「不当表示に該当したとしても、ただちに契約が無効になるわけではありません。しかし裁判で争えば、いくらかの返金が受けられる可能性は高いですし、実際にはそこにいたる前に、売主が任意の返金に応じるケースが多いでしょう」
今回、阪急阪神ホテルズは、利用客から状況を聞いたうえで返金に応じるとしている。該当するレストランや商品の詳細は、同社のウェブサイトに掲載されているので、気になる人は確認してみるといいだろう。
【取材協力弁護士】
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に複数の分野を取り扱う。「常に相談者・依頼者様の視点に立ち、分かりやすい説明を心がけています」
事務所名: 富良野・凛と法律事務所
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