「リベンジポルノ」と呼ばれる行為が、ついに国会でも取り上げられた。
これは恋人や配偶者との関係が破たんした人物が、腹いせに相手のわいせつな写真・動画などをネット上に流出させることで、アメリカのカリフォルニア州では罰金刑の対象になっている。三鷹市の女子高生殺人事件では、容疑者と思われる人物によって被害者のプライベートな画像が出回ったことを受けて、日本でも「リベンジポルノ」という言葉が一般に広まった。
10月23日の参議院予算委員会で、谷垣禎一法相は、民主党の櫻井充(さくらいみつる)議員の質問に答えて「我が国の現在の法制でも、ある程度想定される事案は大体、処理できる」と述べて、現行法で対応できるとして新しく規制をかけることへの慎重な立場を示した。
そのあとで「私も娘を持つ人間」「まことに卑劣で痛ましい事件だったと思っております」と三鷹市の事件に触れて、「その気持ちのもとで、今、何が起こっているのか私どももキチっと考えてみたいと思います」と、今後の検討課題にしていく方針を示した。
櫻井議員と谷垣法相の詳しいやり取りは以下の通り。
櫻井議員:カリフォルニア州で、離婚した元配偶者とか別れた恋人の裸の写真をネットに掲載する「リベンジポルノ」という嫌がらせがあるらいしいんですが、こういった物を非合法化、もしくは罰則規定をきちんと設けた上で規制をしてきたということなんです。今の日本の環境を考えていくと、こういった規制をかけていくべきではないかと思いますが、この点についていかがでしょうか?
谷垣法相:いわゆるリベンジポルノとかサイバーリベンジとか呼ばれるのが、最近しばしば見受けられます。我が国の現在の法制でも、ある程度想定される事案は大体、処理できることはできるんです。たとえば、具体例は私の立場から申し上げにくいですが、公然事実の摘示があれば名誉毀損罪が適用できます。それから被害者が18歳未満であれば、児童ポルノ禁止法が適用される可能性がございますね。刑法175条のわいせつ物に関する罪も数年前に電磁的記録が適用できるように改正させていただきましたので、これも使える可能性が高い。だから、かなりの部分は覆われていると思います。そうしますと、今の法体制で何が足りないのか、あるいは今起こってきているこういう犯罪の中で、今の考え方と違う体系で処罰することがあるのか。それを支える立法事実は何なのかというについては、まだ私どもも十分に情報がございません。したがって、そのあたりについてはしっかり調査する必要があって、そういった前提のもとで、慎重に考えていく必要があるのではないかと考えております。
櫻井議員:はい、ありがとうございます。確かに名誉毀損なら名誉毀損で訴えられるんだろうとは思います。ただ、その画像がすでに(ネットに)出てしまっていて、取り返しのつかないことになっていると思います。私も娘を持つ父親からすれば、「(三鷹市の事件のような)こんなことをやられてしまったら、本当にたまらないな」と。皆さん、同じ思いではないんでしょうか。こうしたことに規制をかけていくことの方が大事かと思いますが、改めて前向きなご答弁をいただければと思います。
谷垣法相:確かに今までの事態と違う部分があるのだと思います。ただ、ことは刑事規制に関わる問題ですから、その可能性はあまり安直に考えてはいけないんで。しっかり支える立法事実を私も調査したいと思っております。
櫻井議員:「安直に考えられない」ってどういうことですか?もっと前向きに(答弁を)いただけると思ってたんですが。
谷垣法相:安直に考えているわけではありません。今の日本の刑事法体系でも……私もブレーンストーミングしてみたんだけど、かなりの部分はこれでできます。これで、できないところを探すのは、むしろ難しいくらいです。もう一つ、先ほどカリフォルニアの例をおっしゃいました。カリフォルニアと日本の法定刑を比べてみると、むしろ日本の法定刑の方が厳しくなっているように私は思います。そういう前提がある上で、あと何をすべきかと。私も後ろ向きであるわけではありません。私も娘を持つ人間として、桜井さんのおっしゃることはよく分かります。で、また個別的事件を言ってはいけませんが、まことに卑劣で痛ましい事件だったと思っております。従いまして、その気持ちのもとで、今、何が起こっているのか私どももキチっと考えてみたいと思います。
櫻井議員:ありがとうございます。やはり終わってから何か措置するという、そういうことができないように。それから被害者の方が相当増えてきているのでご検討いただきたいと思います。
【※】このように谷垣法相はリベンジポルノについて現行法で対応できるとの考えを示しましたが、読者の皆様は新しい規制が必要だと思いますか?コメント欄にご意見をお寄せください。