大型で強い台風26号が16日にかけて、関東地方に接近する。「関東に接近する台風としては10年ぶりの強さ」と気象庁では、大雨と暴風に注意を呼びかけているが、福島第一原発の汚染水漏れは、大丈夫なのだろうか。
今回の台風が懸念されるのは、東京電力は9月16日、台風18号の大雨により、汚染水を貯めるタンクに溜まった水を放出した事実があるからだ。放射性物質ストロンチウムの濃度が、海への排出基準を十分に下回っていると理由を説明している。
東京電力は16日午後、台風18号の大雨で、福島第一原発で汚染水をためているタンク周囲の堰(せき)の内側にたまった水を放出した。ストロンチウムなどの濃度が法で定める放出限度(1リットルあたり30ベクレル)より低いといい、緊急措置と説明している。水は周囲の土壌に流れ、原発内に降った雨水と一緒になり、最終的には海に流れる可能性がある。
(朝日新聞デジタル「福島第一、汚染水タンク周囲の水放出 台風で緊急措置」より 2013/09/16)
安倍首相は9月7日、2020年のオリンピック開催地を決めるIOCの総会で、「汚染水はコントロール下にある」と断言。9月19日にはすでに廃炉が決まっている1〜4号機に加え、5号機、6号機の廃炉を東京電力に要請している。
汚染水への対応では首相も「国が前面に出て私が責任者として対応していきたい」と記者団に強調。「影響は湾内の0.3平方キロメートル以内の範囲において完全にブロックされている」と明言した。ただ、先の国際オリンピック委員会(IOC)総会で述べた「状況はコントロールされている」との表現は使わなかった。
(時事ドットコム「5、6号機の廃炉要請=安倍首相が東電社長に-福島第1原発」より 2013/09/19)
一方で、海外のメディアや識者は汚染水問題に総じて批判的で、科学雑誌の権威「Nature」では、「政府の対応が遅すぎる」としているほか、アメリカ・原子力規制委員会の元委員長だったグレゴリー・ヤツコ氏は、「汚染水のコントロールは不可能」と述べるなど、厳しい意見が多い。
東京電力は9月27日、汚染水の対策の詳細について発表。遮水壁の設置や、貯水タンクの溶接方法の見直し、地下水を組み上げて建屋内への流入を防ぐなど、抜本的な対策に道筋をつけた。
では、「10年に1度」とされる今回の台風については、どのような備えをしているのか。東京電力はハフポスト日本版の電話取材に対して、以下のように回答している。
「細かい対策は今、まさに詰めているところ。クレーンをたたんでおく、ホースをきちんと縛っておく、タンクの溶接を点検する、海上工事は一旦停止する、といった基本的な対策はすでに準備しています。雨がひどい場合、ノッチタンクに一度貯めて、線量を測った上で対応する予定です。それでも間に合わない場合については対応を再度、考えることになると思います」
【続報】
朝日新聞デジタルの報道によると、10月16日早朝、福島第一原発の汚染水タンクを囲む堰内にたまった雨水があふれるとして、排出を始めた。排出したのは午前11時現在で9カ所のタンクの区画。含まれる放射性物質の濃度を調べ、15日深夜にまとまった暫定基準値未満であることを確認したという。 (2013/10/16 11:58)
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