日本海に浮かんだ絶海の孤島が10月2日、地図から忽然と消えてしまった。一体、何があったのか。
筆者が、その「島」に気づいたのは9月29日のことだった。日本政府が自治体や国立大学に対して、Google マップの利用禁止を通知したことを報じる記事を書いていたときのことだった。問題となっている地名の表記を調べるために、Google マップで日本各地の島を見ていたところ、青森県の津軽半島のはるか沖合に見慣れない島があるのを見つけた。
下の写真の左中央に見える「島」がそれだ。津軽半島の西側に日本海上を約100キロ進んだところ。北緯41度東経139度付近に、島のような地形が確認できる。
この「謎の島」の北方にある「大島」とは「渡島大島(おしまおおしま)」という実在の島。日本最大の無人島だ。その南東にあるのは「渡島小島」といって、こちらも他の地図で確認できた。でも、この二つの島とちょうど三角形を結ぶ地点にある「謎の島」は、Yahoo!地図や、国の基本図を作る「国土地理院」が発行している「ウォッちず」など他の電子地図には全く記載されてない。紙の地図でも同様だ。
地図を拡大すると、9角形のカクカクした海岸線の1キロ四方程度の陸地となっていた。だが、地名も港も何も記されておらず、まさしく「謎の島」だ。ちなみにGoogle マップの衛星写真だと、暗い影のような物しか映っていない。
実はこの島、私が知らなかっただけで数年前から話題になっていたようだ。2009年3月に書かれた「 毒蟲警報!」というブログでも以下のように書かれていた。
この島はいったい何てー島なんだ!?
本当に実在するのか??
気になって引っ越しの準備に手がつかない…(爆)
Yahoo!知恵袋でも、2008年8月に投稿された以下の質問を見つけることができる。
青森県沖の、↓の場所に離島なんか存在しないはずなのに、
http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=41.01585908&lon=139.02718...
外国を含む複数のサイトの地図に離島が記されていますが、何故なんでしょうか?
一体、この島は何だろうか。日本の領海にあるかどうは微妙だが、排他的経済水域には入っていそうだ。まさか誰も知らない島が、こんなに日本の近くにあるなら、他国に実効支配されないうちに、早く管理しなければならないはず。しかし、地図にも載せないとは、どういうことなのか。日本海の優れた漁場や海洋資源が手に入るのに、手をこまねているとはおかしい。
不思議に思った私は、9月30日にGoogle社と国土地理院に問い合わせた。
青森県から約100キロ沖合の日本海に島のような地形が見えるのですが、日本政府の国土地理院の地図だと単なる海になっているようです。この地形が実際に島として存在するのかどうか気になっております。もしよろしければ教えていただいてもよろしいでしょうか?
10月2日、国土地理院の担当者から返事が来たのだが、その内容は驚くべきものだった。
「そんな島、どこにもありませんよ」
えっ、そんなはずは……。筆者が出先で慌ててPCを確認すると、確かにGoogle マップからは「謎の島」は影も形もなくなっていた。担当者の男性は次のように言った。
「私も2日前にGoogle マップを見たときは、確かにそのような物があったんですけどね。パワーポイントに保存したし間違いありません。ここに島があるかどうかですか?それは国土地理院としては把握してませんね。この場所は海という認識です」
海上保安庁が出している「東北日本」の海洋地形図(下)でも確認したが、「謎の島」があった地点は水深3300mの海底となっていた。こんなところに住めるのは深海魚くらいのものだろう。何かの間違いで、元々そんな島など存在しなかったのだろうか。
「謎の島」がなぜ生まれて、なぜ忽然と消えたのか。10月3日現在、Google社からはまだ返答は来ていない。
【追記】ノキア社の地図サービス「HERE」では、未だにこの「謎の島」が表示されていることが判明した。(2013/10/4 10:44)
関連記事