汚染水漏れは、コントロールされているのか、いないのか――。安倍晋三首相と東電で見解が分かれた。菅義偉官房長官や東電は沈静化を図るが、野党は追及の構えを見せている。
東京電力の山下和彦フェローは9月13日、福島県郡山市で開かれた民主党の東電福島第一原発対策本部会議で、同原発の汚染水漏れの現状について、「想定を超えてしまうことが起きているのが事実だ。今の状態はコントロールできていないと考えている」と説明した。また、原子力規制庁の小坂淳彦統括管理官も同会議で「管理すべきところを管理できていない」と述べた。時事ドットコムが伝えた。
7日にアルゼンチンで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で「状況はコントロールされている」と断言した安倍晋三首相を真っ向から否定した格好だ。
民主党の海江田代表は記者団に対し、「東京電力が『コントロールできていない』と認めたことは重大な問題であり、安倍総理大臣がオリンピック招致の際に述べた事実と違う。国会の閉会中審査は今月末になるという話もあるが可及的速やかに開くべきであり、臨時国会の召集も前倒しするよう野党一致して求めていきたい」と述べた。
■ 菅官房長官、沈静化図る 東電も足並み揃える
菅義偉官房長官は13日の記者会見で、東京電力幹部が福島第1原発の汚染水漏れを「コントロールできていない」と説明したことに反論し、沈静化を図った。
そのうえで「「(東電側から)貯水タンクからの汚染水漏れなど個々の事象が発生しているという認識を示した発言だと聞いている。安倍晋三首相の発言とは異ならない」と述べた。
東京電力も、あらためて政府と同じ趣旨のコメントを出した。
総理の「コントロールされている」とのご発言は、放射性物質の影響は発電所の港湾内にとどまっており、近海における放射性物質の濃度は、基準濃度をはるかに下回り、継続的な上昇傾向も認められていないということの趣旨だと理解しており、当社としても同じ認識であります。
本日、汚染水問題に関する当社社員の発言として、「今の状態はコントロールできているとは思わない」との認識を示した、との報道がされております。
当社は、海および陸側の放射性物質の濃度について継続して確認を行っておりますが、汚染水の影響は発電所の港湾内に留まっており、外洋については検出限界値以下または告示濃度を遥かに下回る値であり、継続的な上昇傾向も認められないことを確認いたしております。
この度の当社社員の発言は、そうした状況を踏まえた上で、汚染水の港湾内への流出や敷地内の貯水タンクからの漏えいなどのトラブルが発生しているという認識について言及したものです。
安倍首相の「状況はコントロールされている」発言は、汚染水対策を国際公約したに等しい。安倍首相は汚染水漏れの現状と対策を確認するため福島第一原発を19日に視察する予定だが、野党は安倍首相の発言を追及する方針で、今後も波紋を呼びそうだ。
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