政府は年内にまとめる新しい「エネルギー基本計画」において、原発の活用を明記する方針を固めたと報じられている。MSN産経ニュースによると、政府は同計画の中で、原発を基幹エネルギーとして活用する姿勢を明確に示すことが、9月4日に分かったという。
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「エネルギー基本計画」とは、日本におけるエネルギー政策の基本的な方向性を示すもので、10〜20年程度の将来を見通して数年おきに政府が作成する。
東日本大震災における原発事故を受けて、民主党政権では原発ゼロを目標として進めるとしていたが、安倍首相は今年2月にオバマ大統領との首脳会談において原発ゼロを見直すと伝えており、また、安倍政権が6月に閣議決定した「2013年版エネルギー白書」の中でも「原発ゼロ目標」方針を削除している。
新たな計画は、経済産業相の諮問機関・総合資源エネルギー調査会のなかの、基本政策分科会で7月24日から議論がなされている。茂木敏充経済産業大臣は8月27日、これまで月1回程度の開催であった同会を9月、10月はそれぞれ3回ほどの開催に増やして、年内の取りまとめに向けて議論を加速したいと話している。
これまでの議論では、原発の稼働停止で燃料コストが増加し、震災前の原発稼働時と比べて電気料金が25%増加するという資料も提出されている。9月4日に行われた議論では、福島第一原発の現状や、高レベル放射性廃棄物をどのように扱うのかなどが説明された。参加している委員からは、「エネルギーの海外依存度の極めて高い我が国にとって、原子力発電を基幹電源の一つと位置付け、海外に正確に発信、説明して行くことが重要と考える」という意見も出されている。また、海外における原発利用状況を紹介し、日本における原発業界は、安全監視の体制が甘いという指摘もあった。しかし、会合の中では、原発を活用するという決定などは行われていない。
一方、同会の議論の中では、再生可能エネルギーについても多くの意見が出ている。9月4日の会合では、電気がどのように消費されているかに着目し、質の高いエネルギーを家庭の暖房・冷房などにわざわざ使う必要はなく、河川熱や下水熱などの再生可能エネルギー熱を家庭用に使うことが有効なのではないか、地産地消を進めるべきではないかなどの意見も出た。
安倍首相は7月9日、「原子力規制委員会が基準に合うと判断したところは、地元の同意を得る努力をしながら再稼働していきたい」と述べている。SankeiBizによると、原発活用がエネルギー基本計画に明記されると、規制委の審査が順調に進んでいる伊方原発3号機や、九州電力川内原発1、2号機などは、早ければ年明けにも再稼働する公算が大きいという。
これらの報道に対し、インターネットでは再稼働を望む声も一部出ているが、非難の声のほうが数多く上がっている。
基本政策分科会の中では、原発を基幹エネルギーに活用すべきという議論にまでは、まだ至ってはいない状態であるが、政府は“予定通り”進めるつもりであろうか。
原発の活用について、あなたはどう考えますか。引き続きあなたの意見をお寄せください。
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