「ホット炭酸」この冬ヒットするのか? コカ・コーラやキリンが参入する理由

温かい炭酸は受け入れられるか――。9月4日、日本コカ・コーラから「」、キリンビバレッジから「」が発表され、この冬、大手飲料メーカーが「ホット炭酸」を市場に問う。

温かい炭酸は受け入れられるか――。9月4日、日本コカ・コーラから「ホットジンジャーエール」、キリンビバレッジから「キリンの泡 ホット芳醇アップル&ホップ」が発表され、この冬、大手飲料メーカーが「ホット炭酸」を市場に問う。

富士経済によると、清涼飲料水の国内市場は2013年の予測で4兆9801億円。市場全体でほぼ横ばい状態が続く中、炭酸飲料のジャンルに限っては伸び率が高く、成長が期待されている。

分野別に見ると、炭酸飲料市場が前年比8.5%増の5142億円と好調。キリンビバレッジの「キリン メッツコーラ」、伊藤園の「スタイリー スパークリング」といった消費者庁の定める特定保健用食品の認可を受けている“トクホ炭酸”が市場をけん引した。

(Business Media 誠「“トクホ炭酸”がけん引、2012年の清涼飲料市場は前年比2.2%増」より 2013/01/07)

成長分野である炭酸飲料のさらなる底上げのため、「冬に飲む炭酸=ホット炭酸」という発想で「夏しか売れない」季節限定商品という弱点を解消し打開する、それが2社に共通した狙いだ。

炭酸飲料市場は2005年頃から拡大基調。昨年はキリンのトクホコーラ「メッツコーラ」やサントリーの「オランジーナ」など炭酸飲料の新商品が次々と投入され、話題を呼ぶとともに需要を広げたが、季節変動が大きいままだと、さらなる底上げにも限度がある。そこで、2社はホット炭酸を開発・投入することで、1年のうちで最も炭酸飲料が売れない冬場の落ち込みを抑え、1年を通した売れ行きを均そうとしているのである。

(東洋経済オンライン「奇抜な新商品、ホット炭酸は定着するか」より 2013/09/05)

販売の主戦場となるコンビニは売り場争いが激しく、売れ行きが悪ければすぐに棚を失なってしまうため、「定番商品」が強い傾向にある。話題性だけでなく、リピートしてもらうことが重要だが、どういった味なのか。報道資料にはそれぞれこう書かれている。

上品で複雑な味わいは、炭酸と組み合わせることにより美味しくインパクトのある新感覚に仕上がり、ジンジャーエキス、アップルフレーバーそしてシナモンフレーバーを加えることで、さらに豊かな味わいになりました。フルーツとスパイスのフレーバーのブレンドが、「カナダドライ ジンジャーエール」本来の味と繊細な炭酸の刺激にさらなる美味しさをプラスしています。

(日本コカ・コーラ「コカ・コーラ史上 世界初のホット炭酸飲料 「カナダドライ ホットジンジャーエール」」より 2013/09/04)

蜜入りりんごを連想させる芳醇なアップルと、ほんのりとしたホップの香りに、グレープフルーツのキレ味を組み合わせることで、ホットならではのきめ細かく、微炭酸で、やわらかな泡の舌ざわりを実現しました。

(キリンビバレッジ「「キリンの泡 ホット芳醇アップル&ホップ」を新発売より 2013/09/04)

■実は香港ではメジャーな「熱可楽」

温かい炭酸、と聞くと奇抜なようだが、世界を見渡してみると決してないわけではない。

たとえば香港では、温めたコーラにショウガやレモンを加える飲み方がポピュラーだという。香港の航空会社、キャセイパシフィック航空のウェブページにも、そういった記述が見られる。

甘くなって、それでも炭酸が抜けきってはいないコーラの刺激と、レモンと生姜の相性はバツグン! 風邪気味かどうかに関係なく、一日に一杯は飲みたいくらいクセになる味で、この合体を、一番初めに試してみた人に感謝している。

(キャセイパシフィック航空「合体すると新しい飲み物になる ~「熱可楽」編~」より 2010/11/01)

温めたコーラは「熱可楽」と呼ばれ、香港では風邪薬として飲むという。レモン、ショウガを入れる味付けは、ある意味でコカ・コーラが出す「ホットジンジャーエール」の味付けに通じるものがある。

熱姜可楽とは、文字通り「熱」は暖かい、「姜」は生姜の意味になり、「可楽」は中国語でコーラを意味します。要するに、この飲み物はコーラをアツアツに熱して、そこに生姜を入れて飲むドリンクです。あまり美味しそうな飲み物ではないように思われるでしょうが、「良薬は口に苦し」、これこそ中国では風邪退治の良薬の一つとなってきています。

(アップルワールド「風邪をひいたら「熱姜可楽」」より)

アメリカのドクターペッパー公式サイトにも、「ホットドクターペッパー」の記述がある。そこには「昔、冬の飲み物として発明された」と書かれており、「ホット炭酸」がアメリカに息づいていたことがわかる。ホットのドクターペッパーをPRするネオンサインもあり、一定の人気はあったようだ。

ホットのドクターペッパーは昔、冬の飲み物として発明されました。ソースパンで82度までドクターペッパーを熱します。次に、スライスしたレモンをマグカップの底に敷いて、レモンの上にかかるようにドクターペッパーを注ぎます。

(Dr Pepper「FAQ」より)

なお、ネット上では通常の炭酸飲料を温めて飲んだレポートが複数存在するが、やはりコールド用のものを温めてそのまま飲んでも、なかなかおいしくはならないようだ。温かい炭酸飲料にはレモンやジンジャー、シナモンといった助けが必要なのかもしれない。

11月には2製品が出揃う「ホット炭酸」。日本の消費者に受け入れられるだろうか。