佐賀県の県立高校で、来年度に入学する1年生全員が購入する予定のタブレット代のうち、生徒の自己負担額が一律5万円になるということが明らかになった。佐賀県教育委員会は9月3日、各家庭の経済状況に配慮した補助制度は創設しないと明かした。佐賀新聞が報じた。
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佐賀県では、ICT(情報通信技術)を利活用した教育は、教育の質の向上と学力向上のための有効な手段であると捉え、2011年度から全県規模で「先進的ICT利活用教育推進事業」に取り組んでいる。2013年度中には、県立中学校と特別支援学校の全校で電子黒板とともに、校内無線LANおよびタブレットなどの学習者用端末整備が完了する予定だ。
2014年度からは県立高校全校においてもタブレットを利用した先進的ICT利用活用教育がが始まる予定だ。しかし、タブレット端末は配布されるわけではなく、全員購入する必要があるという。佐賀県教育委員会の担当者によると、これまでの納入実績から見て、端末の費用はおそらく5万円を超えることは間違いないとのことだった。5万円を超えた分は県が負担するが、5万円分は生徒の自己負担になる。この端末費用の中に、タブレットで利用できる副教材の料金も含まれているという。
しかし、デジタル版の教科書はまだすべての教科で揃っているわけではなく、そもそも日本では現在「紙」の教科書しか認められていないため、生徒らは別途、「紙」の教科書も購入することになる。また、タブレット費用の分割払いができるかどうかは「検討中」ということだった。
政府は6月14日に「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定し、年代層別の適切な指標(KPI)を設定してITリテラシー向上の取り組みを進める「IT人材強靭化計画」(仮称)を年内に策定するとした。初等教育段階から、児童生徒等の学力の向上とITリテラシーの向上を図るとし、2019年末までに児童生徒全員にタブレット端末を配備するなどの計画を掲げている。
現在のデジタル教科書の普及状況を見てみると、2012年3月末時点でのデジタル教科書整備率は22.6%となっている。ところがこの数字は、先生が電子黒板などに掲示して指導する「指導者用デジタル教科書」の整備数であり、生徒が各自の情報端末で学習する「学習者用デジタル教科書」についての数字ではない。
加えて、現在各社のデジタル教科書の規格もバラバラという状態のため、使い勝手が悪いなどの声も上がっている。そのため、教科書を作成している出版社12社は、規格を統一し、様々な端末で使用できるマルチプラットフォームのデジタル教科書を共同で開発すると9月5日に発表。2015年春の商品化を目指すとしている。
しかし、モノができればすぐに普及されるというわけではなく、デジタル教科書の導入については幾つもの障害がある。生徒が一斉に動画を再生してもインターネット接続が途切れないような高速無線LAN環境の整備や、デジタル化した教科書検定のチェックをどのように行うのかなどの問題が多岐にわたる。しかしなんといっても、冒頭に紹介した自己負担5万円というような高い端末費用が大きい負担となっている。
デジタル教科書教材協議会副会長を務める中村伊知哉さんは、自身のブログ記事の中で「1台年1万円でリース契約」というビジネスモデル案を提案している。
wifiタブレット+アプリ+サポートのセットを年1万円でリースする。1台1万円で売り切るのと違って、通信会社が提供するようなサービスモデルで、設計することはできないでしょうか。通信会社様、メーカ様、アプリ会社様、教材会社様、リース会社様、商社様。
(中村伊知哉氏「1人1年1万円でデジタル教科書を」より。2013/08/29 17:17)
一連の報道に対しインターネットユーザーの間では、下記のようなコメントが出ている。
もうさ、リテラシ無いと教科書買えねぇみたいなことにしたほうが学生は喜び鍛え上がる。教科書のフォーマットだけ教えておいて端末は買えよ。でいい。
デジタル教科書の価格と普及、そして財政についてあなたはどう考えますか。ご意見をお寄せください。
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