東京電力福島第一原発の貯蔵タンクで放射能汚染水漏れや高い放射線量の検出が相次いでいる問題で、東電は9月3日、前日に毎時100ミリシーベルト以上の高線量が計測されたタンクを正確に調べたところ、同300ミリシーベルトだったと発表した。東電は「汚染水が漏れた形跡はなく、タンク内の水位にも変化はない」と説明している。時事ドットコムが伝えた。
2日の測定では、毎時100ミリシーベルト以上を計測できない線量計を使用しており、今回は計測上限が毎時1万ミリシーベルトの線量計を使い再測定した。
一方、これまで高い放射線量が計測されていた「H3」と呼ばれるタンク群の2基を再計測したところ、底部表面で最大毎時2200ミリシーベルトだったと発表した。一連のタンク漏えいで計測された値では最も高い。
■ 政府、汚染水を地上タンクに貯蔵する際のリスク洗い出し始める
政府は3日、汚染水漏れに対処するための基本方針と総合的対策に基づき、汚染水を地上タンクに貯蔵する際のリスクの洗い出しに向けた調整を東電などと始めた。タンクの接ぎ目以外でも汚染水漏れが起こる可能性を検証し、漏えいの未然防止や汚染拡大の抑制につなげたい考え。
対策として、国費470億円を投入する方針を明らかにし、このうち320億円は周辺の土壌を人工的に凍らせて原子炉建屋に地下水が流れ込むのを防ぐ「凍土遮水壁」の設置工事に使う。また、汚染水から放射性物質を取り除く処理装置の改良費用も政府が負担し、計470億円のうち、今年度予算の予備費から210億円を拠出するという。
また、政府は鋼板の接合部をボルトで締める「フランジ型」タンク約300基全てを、信頼性が高いとされる溶接型に切り替える方針も決定。ただ具体的な切り替え時期は示さなかった。
■ 2020年東京オリンピック招致への懸念を払拭
東京都が立候補している2020年のオリンピック開催地の決定を7日(日本時間8日)に控える中、安倍晋三首相は3日に開かれた原子力災害対策本部と原子力防災会議の合同会議で汚染水問題に関し「世界中が注視している。政府一丸となってその解決に当たっていく」との決意を表明した。さらに「汚染水問題については東電任せにせず、政府が前面に立ち解決に当たる」と強調。「従来のような場当たり的な事後対応ではなく、汚染水問題の根本的な解決に向け汚染水対策の基本方針を取りまとめた」と述べた。
また、東京オリンピック招致委員会の竹田恒和理事長が、東京電力福島第一原発からの汚染水漏れに対する懸念を払拭(ふっしょく)するため、開催都市決定の投票権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)全委員に対して書簡を送ったことが3日、分かった。招致委によると、「(東京では)普段通り、大気、水はクリーンである。毎日チェックされており、問題になるような兆候はない」などと記したという。