アメリカのベイナー下院議長(共和党)は9月3日、ホワイトハウスでオバマ大統領と会談した後、記者団に対し、シリア・アサド政権への軍事行動を決断した「大統領を支持する」と表明した。また、反対姿勢を示している議員を説得する考えも示した。時事ドットコムが伝えた。
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ロイターによると、大統領は会合で、シリアへの軍事介入が限定的な範囲にとどまるとあらためて強調すると同時に、アメリカとしてシリアの反体制派を支援するより広範な計画があることも説明した。
会合後、共和党のベイナー下院議長とカンター共和党下院院内総務、民主党のペロシ下院院内総務は、シリアへの軍事介入を支持すると表明。ベイナー議長は記者団に対し「アサド大統領(の行為)を止め、このような行為が許されないということを世界中に示す能力があるのはアメリカだけだ」と語り、他の議員も介入要請を支持すべきとの考えを示した。
■ ケリー国務長官「地上部隊の投入ない」
アメリカのケリー国務長官は3日、上院外交委員会の公聴会に出席し、シリアへの軍事介入で地上部隊を投入することはないと言明した。
長官はこれより先、オバマ大統領に地上戦を行う意図はないと強調しながらも、地上部隊投入の選択肢を排除した決議案をアメリカ議会の承認にかけたくないとの意向を表明した。
また、ケリー長官は公聴会の中で、シリアの化学兵器使用を容認するかどうかは「世界の『レッドライン』(越えてはならない一線)、人間のレッドラインの問題だ」と主張。さらにイランや北朝鮮を名指しし、議会が軍事介入を支持しなければ「独裁者が核兵器を含む大量破壊兵器を追求する機会を生み出すことになる」と強調した。
■ アメリカ世論調査、6割が反対
3日発表のワシントン・ポスト紙とABCテレビの合同世論調査結果によると、アメリカによるシリアへのミサイル攻撃に反対する人は59%に上り、支持の36%を大幅に上回った。
調査は8月28日から9月1日にかけ、全米の成人1012人を対象に電話で実施された。こうした世論の動向は、9日以降にシリア軍事介入の是非を議決する上下両院の動きに影響を与えそうだ。
■ 潘基文事務総長、シリア攻撃に反対表明
国連の潘基文事務総長は3日の記者会見で、シリアでの化学兵器使用疑惑を受けてオバマ大統領が決断した対シリア武力行使について、「いかなる懲罰的な措置も、それがさらなる流血の阻止や紛争の政治解決に向けた努力に与える影響をわれわれは考慮しなければならない」と述べ、シリアへの武力行使に反対する姿勢を明確に示した。
潘事務総長は「武力行使が合法なのは自衛か、安全保障理事会が容認した場合のみだ」と述べ、安保理決議を経ないシリア攻撃は国際法違反になるとの立場を表明。これまで「国連憲章の重要性を強調する」と間接的な表現をしていたが、一歩踏み込んだ形となった。
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