シリア軍事介入、イギリス議会で異論噴出し否決 ロンドンでは抗議デモ

イギリス政府がシリアへの軍事介入に踏み出せないでいる。大量破壊兵器を保有しているとしてアメリカのイラク侵攻を支援した記憶が鮮明で、国内世論や議会内で慎重な対応を求める声が上がっているためだ。

イギリス政府がシリアへの軍事介入に踏み出せないでいる。大量破壊兵器を保有しているとしてアメリカのイラク侵攻を支援した記憶が鮮明で、国内世論や議会内で慎重な対応を求める声が上がっているためだ。ロイターが伝えた。

キャメロン首相は29日の議会で、「(シリアへの軍事介入に)国連安全保障理事会で圧倒的な反対があれば、(イギリスが軍事行動を)開始することは考えられない」と言明した。

議会では与野党双方から、軍事行動に関する採決を行う前に、化学兵器使用のさらなる証拠が必要との意見が噴出、軍事介入に前向きだった首相は主張を弱めざるを得なくなった。

テレビ朝日によると、シリアへの軍事行動を計画しているイギリスでは、市民らが抗議活動を行った。デモ参加者は「化学兵器を使用した証拠がないのに、どうして軍事介入ができるんだ?」と語った。この抗議デモには、ロンドン市民ら1000人以上が参加した。

イギリスの調査会社YouGovが29日に公表した世論調査結果でも、国民の51%がシリア攻撃に反対、賛成は22%にとどまった。

■ 国連安保理決議なしで軍事攻撃が可能という法的見解を発表

イギリス政府は29日、国連安全保障理事会の決議が得られなくても、シリアへの軍事攻撃に踏み切ることが合法的であることを示す法的見解を発表した。

イギリス政府の法的見解に関する文書は、シリアで起きている非人道的な行為を抑止するため「国連安保理での行動が阻止されたとしても、英国は国際法の下、異例の措置を講じることが可能」と指摘。

「さらなる(非人道的な)攻撃の発生を防ぐことを目的に、特定の標的を攻撃する軍事介入は必要かつ適切だ。そのため法的に正当化される」とした。

また、シリアの化学兵器使用疑惑に関し、イギリス情報当局の資料も公表。化学兵器が使用されたことに疑いの余地はないとし、アサド政権が行った「可能性が極めて高い」ことを示す「一部」情報が存在するとした。

■ フランス軍は準備完了、アメリカ「攻撃は限定的」

産経新聞によると、AP通信は同日、シリアへの軍事介入をめぐりフランス軍も命令が出た場合の準備が整ったと伝えた。

一方、アメリカ・ホワイトハウスのアーネスト報道官は29日、シリアのアサド政権による化学兵器使用に対するアメリカの対応は「非常に控えめで限定的な」ものになるとの見解を示した

同報道官は、アメリカのシリアへの対応はイラクへの対応とまったく対照的なものになるとし、「現在われわれが検討しているのは、非常に控えめで限定的なものだ」と述べ、政権打倒を目的とした、終了期限を指定しない紛争にはならないとの考えを示した。

また、アーネスト報道官は、アサド政権が化学兵器を使用したとアメリカ政府が確信するに至った諜報報告の詳細の公表に向けて準備を進めていると語った。

シリアの化学兵器使用疑惑に関する機密情報や、未公表の報告書などによると、アメリカ当局はシリア政府軍が化学兵器による攻撃を行ったと強く確信。アサド政権側に責任があるとの見方を示している。ただ、米当局はアサド大統領自身が化学兵器の使用を命令したかどうかを示す証拠は得られていないという

アメリカ安全保障当局、およびアメリカの同盟国政府に近い筋によると、化学兵器を使用するとの決断は、シリア政府高官ではなく、戦闘現場の司令官が下した可能性がある。

■ アサド大統領「いかなる攻撃からも自国を防衛する」

シリアのアサド大統領は29日、いかなる攻撃からも自国を守るとの姿勢を表明した

シリア国営放送によると、同大統領は訪問中のイエメンの政治代表団に対し、「シリアを直接攻撃するとの脅迫は、深く根付いているわれわれの指針、およびシリア国民の自由な意思に対するコミットメントを強化するものでしかない」とし、「シリアはいかなる攻撃からも自国を防衛する」と述べた。

また、NHKによると、シリアのハルキ首相は内相や保健相などを集めた対策会議を開き、「敵の攻撃によって電気や水の供給、それに通信サービスを滞らせないようにする必要がある」と述べ、関係省庁に対し攻撃に備えるよう指示した。

反政府勢力によると、ダマスカスなどでは隣国のレバノンなどに避難しようとする市民が相次いでいるほか、食料や水を買いだめする人も多く見られるということで、日に日に緊張が高まっている。

■ 国連調査団、31日シリア出国へ

国連の潘基文事務総長は29日、シリアの化学兵器使用疑惑をめぐり現地を査察している国連調査団について、31日午前にシリアを出国すると明らかにした。30日までは調査を継続するとしている。

事務総長は記者団に対し、シリア情勢について28日にオバマ米大統領と電話で話し合ったことを明らかにし、「彼ら(国連調査団)はあす30日まで調査活動を継続する。31日午前にシリアを出国し、私に報告することになる」と語った。

撤収後、米欧「有志連合」による軍事介入がいつでもあり得る情勢となり、シリア内戦は重要局面を迎えた。

■イギリス議会が軍事介入決議を否決

このような状況の中、キャメロン首相は29日夜に開かれたイギリス議会において、シリアへの軍事行動の是非を問う提案を行うも、反対多数で否決。キャメロン首相は「国民の意見を反映した議会が、英国の軍事行動を見たくないのは明らかだ。政府はこの結果に応じて行動する」と述べ、米国と最終調整していた軍事行動への参加を断念する方針を明らかにした

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※2013/08/30 08:41 イギリス議会での否決の部分を追記

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