「日本人は助けを求めるのがヘタ」 福島原発の汚染水漏れに海外から懸念の声も
22日、福島第1原子力発電所の汚染水貯蔵タンクのうち2個の底付近で、乾燥地としては初めて、1時間あたり70〜100ミリシーベルトの高放射線領域が発見された。100ミリシーベルトは、作業員の5年分の被爆許容量に相当する。
20日には貯蔵タンクからの高レベル放射性水約300トンの漏出が公表され、他の貯蔵タンクにも漏出があるのではないかとの懸念が持ち上がっていた。ただし今回の貯蔵タンク内は満水で、漏水は確認されなかった。
各紙は、東京電力の危機対応能力が一層疑われ、政府の介入強化が求められていると報じた。
【実態は把握不可能】
BBCは、コンサルタントのミクル・シュナイダー氏やウッズホール海洋研究所のケン・ベッセラー氏ら専門家の意見として、実態は、東電や日本政府に「信じさせられていたよりもずっとひどい」可能性があると示唆した。
山側から供給され続ける地下水に、タンクだけでなく地下室や、施設各所の確認不能な亀裂からの汚染水が混入し、その総量は把握できない状態にある。水を汲み上げても貯水タンクには限度があり、どうしても一部は海に達して、魚介類などを汚染する。放射性セシウムなどの一部は地層で濾過されるが、ストロンチウム90など流動性の高いものはすり抜ける。
また、使用済み核燃料棒を保管しているプールについても、プールに接近して確認できない以上、亀裂が存在する可能性がある。使用済み核燃料棒は、チェルノブイリで爆発時に放出されたよりもはるかに多くの放射性セシウムを含んでいるという。
福島原発について国際的タスクフォースの結集を呼びかけているシュナイダー氏は、「日本人は助けを求めるのが下手だという問題を抱えています。それは大きな間違いです。彼らにはその助けが、どうしようもなく必要なのです」と語っている。
また、村田光平・元駐スイス日本大使は、東京オリンピック招致の中止を求めている。国連事務総長への書簡で村田氏は、東電が発行する公式の放射線数値は信頼できないと述べたという。
【政権の原子力セールス路線にも打撃】
ブルームバーグは、24日から原子力技術の売り込みのため中東に向かう安倍首相の経済戦略にとっても、打撃だと論じた。安倍政権は原子炉再稼働により、円安の副産物であるエネルギー輸入コストの削減も狙っている。
安倍政権は発足以来50%以上の支持率を維持しており、先週の時事ニュース調査でも54.2%となっている。しかし支持の源は経済政策であり、消費税増税で経済成長が阻害されないためにも、原子炉再稼働は死活的に必要であるという。
それに対し、7月時点の世論調査でさえ、日本人は再稼働に反対51%、賛成40%であった。上智大学の中野晃一教授は、「安倍政権は肩をすくめて、事態は現在制御できていると言い、施設の再稼働を推進し続ける誘惑に駆られるかもしれません」、「漏出がもっと深刻であることが示されれば、それは大衆の反発と国際的な批判の観点から、全く見当違いのアプローチとなるかもしれません」と懸念している。
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