『卵活』を広く認めるべきか--。
日本生殖医学会は8月23日、未受精の卵子を凍結保存することを、健康な独身女性にも認めるとする指針案をまとめた。晩婚化が進み、将来的に妊娠を望む女性が、若いときの卵子を残したいという希望に応える一方、ルールなく技術が広がらないようにする。朝日新聞デジタルが伝えた。
一方で、卵子凍結をする年齢を「40歳以上は推奨できない」としたほか、45歳以上の女性には、凍結した卵子で不妊治療を行うことは推奨できないとした。今後、一般の意見を募集し、正式に決定する。
共同通信によると、女性の晩婚化と晩産化が進む中、妊娠の可能性がより高い、若い時の卵子を保存したいという女性の要望に応じ、一部の不妊治療施設で卵子凍結が広まりつつあるが、現状では法的な規制がない。同学会は「何らかの道しるべを定め、無秩序に広がるのを防ぎたい」としている。
卵子凍結は、通常体外受精のために採卵したものの、夫の精子が採取できなかった場合などに、卵子を無駄にせず保存する目的で使われる。最近は、自分の卵子を若いうちに採取・保存し、将来の妊娠に備える技術として注目を集めている。凍結卵子を使った体外受精による出産は86年、オーストラリアで最初に報告された。だが、卵子は凍結すると壊れやすく、通常の不妊治療では精子と合体させた受精卵にしてから凍結保存する例が大半を占めている。
法律による規制はないが、関連する学会は、倫理的な問題から広く行うべきではないとして、不妊治療をしている夫婦とがんの放射線治療で卵子に影響が出るおそれがある患者などに限るべきだとしてきた。
しかし、晩婚化が進むなか、卵子の老化による将来の不妊を心配する独身女性が増え、不妊治療のクリニックでは、数年前から妊娠する可能性が高い、若い時の卵子を保存したいという女性の要望に応じて卵子凍結が急速に広がっているとみられている。
学会の理事長で慶応大学の吉村泰典教授は「不妊治療を受けずに自然に妊娠するのが最も良く、決して勧めるものではない。卵子凍結を行っても妊娠できる保証はないのに、妊娠を後回しにすると、結果として子どもを授かれない場合も出てくるので、無秩序に広がるのを防ぐ必要がある。慎重に考えたうえで最後の選択肢としてほしい」と話している。
一方で、卵子凍結を積極的に推進すべきとの意見もある。7月29日に発売された雑誌AERAでは「〈卵子の老化〉婚前卵活で産みたい」という特集が組まれた。この中で、1999年に「ガラス化保存法」を用いた卵子凍結を開発した生殖工学博士・桑山正成さんは次のように話している。
キャリアを積む女性が増えてきた現代に、高齢出産が増えるのは当然です。技術があって、その技術を使えば、多くの女性を幸せにできるのに、それをさせないのは、旧来の男社会が女性の活躍を阻もうとしているからとしか思えません。卵子凍結で自然妊娠に悪影響が出るわけではありません。海外では当たり前に使われている予防医療技術で、ガラス化保存法は世界中で100万症例以上実施され、数えきれないほどの健康な赤ちゃんが誕生している。日本の未婚女性にも広く認められるべきです。
(朝日新聞出版dot.「AERA 2013年8月5日号 注目の技術「卵子凍結」は何個するのが妥当?」より)
※卵子凍結の技術は推進すべきか、それとも最後の選択肢とすべきか。みなさんのご意見をお寄せください。
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