社会保障改革の手順を閣議決定。肝心の年金問題についてはほぼ手つかずのまま
政府は8月21日、閣議において社会保障制度改革の手順を定めるための法案骨子を決定した。これはプログラム法案と呼ばれているもので、社会保障制度改革国民会議が8月6日に提出した報告書をもとに、社会保障政策に関する改革の実施時期を示したもの。秋の臨時国会での成立を目指している(本誌記事「社会保障制度改革国民会議の最終報告。年金は現状維持で世代間不公平は解消されず」参照)。
基本的には社会保障制度国民会議の報告書に沿った内容となっており、年金制度の現状維持と、医療介護分野における自己負担比率の増加および高額所得者の負担増加に集約される。
社会保障問題の根幹をなす年金改革については、実施を見送り基本的に現状維持とする内容にとどまった。日本の年金制度はその持続可能性に対して疑問符が付いているが、当面の間、抜本的な改革は行われないことになる。
ただ高額所得者に対する給付金削減や物価上昇に応じて給付金額を増加させる物価スライド制については見直しを検討するとしている。
医療や介護については、現在1割負担となっている70歳から74歳の負担を2割に増やすことや、高額所得者の負担増などについて2017年度を目処に実施するとした。また介護については2015年度を目処に高額所得者の負担増加を実施するとした。
日本の年金制度は、個人が老後の資金を積み立てて、それを年金という形で受給するという個人完結型ではない。あくまで下の世代が上の世代を私的に扶養するという「家族制度」の考えに基づいて制度が設計されており、高齢者の人数が増えれば、若年層の負担は際限なく増える仕組みになっている。
少子化が進んでい る現在、制度を維持するためには、自分が積み立てた分を自身が受け取るという個人主義的な制度への移行が必要という意見は根強い。
今回の法案では物価スライド制の廃止や高額所得者に対する給付制限を検討するとしたが、年金の持続可能性という意味では焼け石に水である。年金問題は当分先送りされることになったと考えてよいだろう。