防衛省は、アメリカの輸送機オスプレイを陸上自衛隊に導入する方針であることが8月20日、明らかになった。
防衛省は20日、米国製の新型輸送機オスプレイを2015年度にも陸上自衛隊に導入する方向で検討を始めた。ヘリコプターのように垂直に離着陸できる特性を生かし、離島防衛や災害救助などに迅速に対応したい考え。同省は13年度予算に調査費800万円を計上し、導入に向けた検討を進めていた。14年度予算ではこれを1億円程度に増額し、配備する場合の規模などについて検討に着手する。
(時事ドットコム「:陸自にオスプレイ導入へ=調査費増額、15年度にも配備」より 2013/08/20)
■「ドリームマシン」のはずが「未亡人製造機」に
オスプレイは離着陸に長い滑走路を必要としない、次世代型の垂直離着陸輸送機だ。離着陸の制約が少なくなること、航続距離が伸びること、速度が速いことなど画期的な機体となるはずだったが、試験飛行中に事故が多発したことから、安全性についての不安が拭えずにいる。
従来型の輸送機やヘリコプターでは不可能だったミッションを遂行できることから、米軍は軍事作戦の在り方を変える「ドリーム・マシーン」と呼んでいる。
ただ、そのドリームを実現するために機体は航空機史上で最も複雑なシステムとなり、開発には25年もの歳月と莫大な経費を要した。操縦も難しく、試験飛行中には墜落事故が多発して「ウィドウ・メーカー(未亡人製造機)」というありがたくないニックネームを付けられてしまった。
(時事ドットコム「【特集】垂直離着陸機オスプレイ」より)
■在日米軍にも配備で政治問題化
試作機段階の問題を解決したとして、アメリカは2005年に量産を承認、2007年のイラク戦争で初めて実戦配備された。今後、米海兵隊は合計360機のオスプレイを導入する予定だ。在日米軍のオスプレイ導入もこのプロジェクトの一環で、2012年7月に上陸。2013年にも12機が普天間基地に配備予定だ。
国内の米軍基地への導入をめぐっては、受け入れ先となる沖縄からの反発も多く、デモや抗議集会がたびたび行われた。
米新型輸送機オスプレイの配備撤回と米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県外移設を求めて、沖縄の要請団約130人が27日、上京した。東京・日比谷で抗議集会を開き、銀座をデモ行進した。
県内41の全市町村の首長・議長(代理含む)や県議らが参加し、28日は官邸を訪れて「直訴」する。「沖縄の声が本土では一顧だにされない」という反発から、1972年の本土復帰後では最大規模の上京・要請に踏み切った。
(朝日新聞デジタル「オスプレイ撤回など訴え銀座デモ 沖縄の首長らが参加」より 2013/01/17)
一方、尖閣や竹島など国際問題、集団的自衛権の問題を背景に、能力の高いオスプレイの配備を必要だと訴える意見もある。
米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ第2陣が米海兵隊岩国基地(岩国市)に陸揚げされたのに合わせ、オスプレイの必要性を訴える集会が2日、岩国市山手町1丁目の市民会館前であった。
岩国市議や市民らでつくる「オスプレイ駐機配備に賛成する有志の会」主催。メンバー約30人が「配備断固賛成」と書かれた横断幕を掲げ、「中国や朝鮮半島の脅威への抑止力になる」「有事の際に必要だ」などと声を上げた。
(中国新聞「「オスプレイ必要」賛成集会」より 2013/08/03)
さらに日本では2012年、民主党政権下の森本敏防衛相が、自衛隊への導入を前提として、そのための調査研究費を要求するよう指示。現在の安倍政権もこの流れを引き継いでいる。
森本敏・前防衛相は11月ごろに調査研究費の要求を省内で指示。政権交代後も方針は引き継がれることになった。防衛省は1機約100億円とみており、いまのヘリより高額なため効果的な配備や在日米軍との連携などを研究する方針だ。
(朝日新聞デジタル「防衛省、オスプレイ導入検討 13年度予算に調査費要求政治」より 2012/12/30)
オスプレイ配備をめぐる主な論点となる安全性については、他のヘリと比べて低い事故率で問題ない、とする意見と、アメリカ軍が実用化した後にも2012年4月にモロッコで、6月にフロリダで死亡事故を起こしている点を重視し、問題があるという意見に分かれている。
オスプレイの事故率や環境に与える影響、騒音などについては防衛省がパンフレットを作成している。
【オスプレイとは】
在日米軍でなく自衛隊への導入となれば今後、一層議論が激しくなることが予想される。
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※自衛隊のオスプレイ導入について、みなさんはどう思いますか。ご意見をお聞かせください。
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