猛暑が続く中、水不足の懸念が出ている地域が出てきた。5月以降の少雨傾向で、各地で取水制限を実施しており、4分の3が利根川水系に依存している東京都でも、節水を呼びかけている。いっぽう、機器の進化などで節水が進むことで、水道料金を値上げしなくてはいけない自治体も出てきているという。
滋賀県の栗東市も節水などが理由で水道料金を上げた自治体の一つ。同市の水道料金は2013年10月から値上げが予定されているが、その理由は下記のように掲載されている。
給水人口が増加しているにもかかわらず、近年の生活様式の変化や世帯人員の減少により1戸当たりの平均使用量が減ってきていることに伴い、全体の使用量、給水収益ともに減少傾向にあることから、このままでは平成25年度に収支均衡が崩れ、以降赤字決算となることが確実な状況です。
(栗東市ホームページ「水道料金改定のお知らせとお願い(平成25年9月検針分から)」より)
「市民が節水を行っているのに、水道料金が値上げされるのはおかしい」と、佐世保市(長崎県)でも長期にわたり、議論が行われてきたが、結局19.68%の値上げを実施することになった。
“水”も普通の商売と同じように、“需要”がなければ売れない。そのため、販売する企業の利益が減ったり、ときには赤字に陥ることもある。下水道事業は93.4%が地方公営企業による運営となっているが、これらの公営企業が赤字になると、経営の見直しを行うか、顧客である“市民”に対して、料金の値上げを実施することになる。
水道事業には、水の提供だけでなく、下水道サービスやインフラのメンテナンスなども含まれる。水道インフラの老朽化は今後増えると予想されており、設備の更新費用の確保のため、水道料金の値上げをおこなうところもある。MSN産経ニュースでも、2011年度だけで8.5%の自治体が赤字に陥り、今後も水道管の更新は全国的な問題になる気配と報じている。
では、どうすれば水道事業の収益が改善されるのか。その一つの案として検討されているのが、『コンセッション方式』と呼ばれる官民連携の取り組みだ。『コンセッション方式』とは、サービスの所有権は保有しながら、運用権を外部に売却するというビジネスの仕組みのことで、竹中平蔵・慶大教授がこの方式の強化を提案している。
競争力会議の試算では、空港や高速道路、上下水道といった公的な資産の総額は約185兆円。負債を差し引いても約100兆円の価値がある。こうしたインフラなどの「運営権」を売却すれば、「最低でも数十兆円になる」(竹中教授)という。会議では、運営権の売却で得たお金を、古くなった道路やトンネルを直す費用に回す案も出た。
(朝日新聞デジタル「空港・地下鉄運営売却で数十兆円 「埋蔵金」竹中氏提言」より。 2013/04/04 05:25)
竹中教授は、4月17日に開かれた政府の産業競争力会議においても、下記のように述べ、これから政府が成長戦略で世界各地に売り込もうとしている“日本のインフラ”についても、現状においては競争力がないと指摘。
世界を見渡してみれば、港湾であれ空港であれ、インフラを運営する世界的企業が存在する。デンマークのある企業は 68 カ国で港湾の運営を行っている。こういった企業は世界にはあるわけだが、日本にはない。
これは何故なのか、それは、そういう仕事を官が取り込んで国内で営業できないから、海外で勝てるわけがない。これを上手くやれば、実は、非常に大きな財政への貢献にもなる。そして何よりも民間のサービスも向上する。
(産業競争力会議「第6回議事要旨」より。 2013/04/17)
この発言を受けて、安倍首相も「公共インフラについて、財政規律を維持しつつ効率的にしっかりとその機能を確保するためにも、民間活力を最大限活用することが重要である。公共施設の運営を民間に委ねる方式の活用を拡大し、新たなインフラ産業の創出につなげていきたいと思う」と発言。さらに、麻生太郎副総理は、4月23日に行われた国際戦略問題研究所(CSIS)での講演で、「水道を全て民営化します」と発言している。
国土交通省は下水道施設の運営権について、一括の売却ではなく部分での売却を進めるとされているが、今後の下水道事業の官民連携は進むとみられる。
しかし、民間企業に任せると、さらなる料金値上げが進むのではないかという懸念もある。命にかかわるインフラだけに、民間の運営にはどこまで任せるべきなのか。今後も議論が続けられることになるだろう。
民間のインフラ運営をどのように考えますか?あなたの意見をお寄せください。
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