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台湾議会では台北近郊に完成間近の龍門原子力発電所(第4原発)の是非めぐる国民投票の実施について2日、野党側の議員数十名が議事堂の占拠を企て、乱闘に発展。コップやペットボトルから水を浴びせあい、議員2名がつかみ合いのケンカを始め、床に転がり、しばらくのち引き分けられた。模様はテレビで生中継されていた。
台湾ではすでに3つの原発があることから、龍門原発は「第4原発」と呼ばれている。1999年に建設が開始されたが、翌2000年5月には同原発の建設中止を公約に掲げていた民進党の陳水扁政権が発足し、建設中止の方針を打ち出した。しかし政府と台湾の最高立法機関である立法院が対立。陳水扁政権は同原発の建設中止を撤回せざるをえなくなった。
その後、再度政権を取った国民党の馬英九政権によって、2008年に再度、第4原発の建設と早期の商業運転開始を目指してきた。
しかし、2011年の東日本大震災における福島第1原発の事故を受け、台湾でも原発見直しを求める声が高まったが、馬英九政権は福島第1原発事故の直後においても、当初は原発の運転継続を主張した。
ジェトロの竹内孝之による「台湾:第4原発に関する国民投票は実施されるのか?」レポートによると、台湾は日本と同様、地震多発地帯にあり、原発もすべて海岸沿いに立地している。また、台湾の南端・屏東県から高雄市などへ電力を供給する第3原発を除き、台湾の原発はいずれも首都・台北市を取り囲む新北市(旧台北県)に立地している。そのため、地震による津波で都市部に被害が及ぶリスクがあり、社会的な影響は福島第1原発事故よりも遥かに大きくなる可能性もあると指摘されている。
なお、台湾は、2012年1月にも総統選挙があったが、脱原発は大きな争点になることはなく、総統選挙は現職の馬英九総統の勝利に終わっている。
原発反対が世論の多数を占めつつあることは、与党国民党にも圧力となっている。3月25日には、同党所属の胡志強台中市長が「国民投票が成立し、建設中止の提案が通過した場合は、政府はこれに応じるべき」と発言した。事実上、国民党の政治家も建設反対に傾き、馬英九総統や江宜樺行政院長は与党内でも孤立しかねない状況に陥っている。