小松一郎駐仏大使、次の内閣法制局長官に 集団的自衛権見直しへ安倍政権布石

安倍首相は内閣法制局長官人事で現職の山本庸幸氏を退任させ、後任に小松一郎駐仏大使を起用する方針を固めた。8日にも閣議決定する…

集団的自衛権の行使に向け、安倍首相がまた一つ布石を打ったようだ。内閣法制局長官人事で現職の山本庸幸氏を退任させ、後任に小松一郎駐仏大使を起用する方針を決めた。

小松氏は外務省出身。大臣官房参事官の条約局担当や条約局審議官など、入省以来ずっと「条約畑」を歩んできた条約の専門家だ。集団的自衛権行使容認にかかわる憲法解釈の変更に積極的な考えを持つとされている。法制局次長が長官に昇任する通例を破り、法制局勤務経験のない外交官を長官にする異例の人事となる。

■総理大臣よりも偉い?「内閣法制局」とは

内閣法制局の審査をパスしなければ内閣(政府)は一本の法案も国会に提出できないことから、「法の番人」とも呼ばれている。時代による政治状況などを極力排除し、純粋に法律的な見地から厳格なチェックをすることで知られている。

内閣の補助部局の一つで、法律問題に関して内閣や大臣に助言を与える内閣直属の機関。内閣法制局は、法令の適用や解釈について内閣や各省庁で疑義が生じたときに意見を述べ、あるいは法律問題に関し、政府統一見解を作成するときに大きな役割を果たす。(ブリタニカ国際大百科辞典)

橋本政権で総理秘書官を務めたみんなの党・江田憲司議員は、内閣法制局とのやりとりをブログで以下のように振り返っている。

私は橋本内閣の総理秘書官として官邸入りしたが、そこでも内閣法制局の「法匪」ぶりは変わらなかった。たとえば周辺事態法案(ガイドライン法)の扱いがそうだ。総理が内閣法制局長官を呼び、何を言おうが、「法律的にできません。憲法違反です」と繰り返すばかり。どちらが"上役"かわからないような光景だった。

(江田憲司氏ブログ「内閣法制局よ、お前は何者なのだ」より)

■「画期的な人事だ」民主党の改憲派・長島議員からは喜びの声。

■報道各社の反応

「安倍首相はトップに行使容認派を起用し、解釈変更への環境を整える考えだ」

(朝日新聞 「内閣法制局長官に小松氏 集団的自衛権容認派」 2013.8.2 11:24)

「首相としては、小松氏登用で政府解釈見直しに向けて万全の布陣を敷くとともに、意向に逆らう法制局を強く牽制(けんせい)する意図がある」

(産経新聞 「法制局長官に小松駐仏大使 集団的自衛権見直し布石」2013.8.2 07:10)

「菅義偉官房長官は2日午前の記者会見で、安倍内閣の人事方針に関し「順送り人事ではない。適材適所だ」と強調。憲法解釈については「内閣全体で物事を考えていくべきだ」と述べ、政治主導で検討する考えを示した」

(時事通信 「法制局長官に小松駐仏大使=集団的自衛権積極派」 2013.8.2 08:30)

などと伝えている。

一時は憲法改正手続きの要件緩和を目指して96条改正を高らかに訴えた安倍首相だが、改憲派などから予想以上の反発を受け、いまは主張を控えるようになっている。今回の人事で見え隠れする「正面突破が無理なら裏口から」という思惑は、麻生大臣の「ある日気づいたら、誰も気づかないうちに変わった」という「ナチス憲法発言」の趣旨と同じ線上にあるのではないか。

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