企業や官公庁のウェブサイトを閲覧しただけで、パソコンが知らぬ間にウイルスに感染するという、新たなサイバー攻撃が広がっている。専門家は、急増するインターネットバンキングの不正送金事件との関連を指摘する。
朝日新聞デジタルの報道によると、この手口は、企業や省庁のウェブサイトを改ざんし、ワナを仕掛けるのが狙いのようだ。利用者がその企業や省庁のサイトを閲覧しただけで、ウイルスを保存したサイトに自動的に誘導される。ただ、ウイルス対策ソフトが検知すれば感染を防げるという。今年3月に、環境省のサイトで確認されたほか、6月にはトヨタ自動車、リコーなどの大手企業、日本赤十字社のサイトなどが相次いで被害を受けた。民間のセキュリティー会社の調査では、見つかったウイルスの一部から、個人情報を盗み出そうとする機能も確認されたという。
専門家の見立てでは、こうしたサイバー攻撃の目的はネットバンキングの不正送金を狙ったウイルス感染の可能性が高いという。口座情報や、利用するためのID、パスワードなどを盗み出すための強力なウイルス「ゼウス」は、昨年ごろから世界中で猛威をふるっている。利用者がネットバンキングにアクセスすると動きだし、口座番号やID、パスワードなどを入力させ、本来とは違う画面が出る。米ウイルス対策大手「シマンテック」の調査では、6月以降、今までにないペースで感染が広がっているという。
産経新聞によると、今年1-6月でネットバンキングをめぐる不正送金額は約2億200万円に上っている(警察庁調べ)。被害額が3億800万円で過去最悪だった2011年を上回るペースで増えている。被害件数は計210件で、三菱東京UFJ、みずほ、楽天、ゆうちょ、りそな、セブンの各銀行など計11の金融機関の利用者が被害にあった。ほとんどの利用者のパソコンが、IDやパスワードを盗むウイルスに感染していたという。(MSN産経ニュース 「ネット銀の不正送金被害、2億円超す 過去最悪ペース」 2013/7/13)
シマンテックのウイルス解析責任者は、朝日新聞デジタルの記事の中で、「ネットバンキングにアクセスした時に普段と違う画面が表示されたら絶対に入力しないで」と注意を呼びかけている。
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