長く科学者や天文学マニアたちのあいだで物議を醸してきた問題。 果たして火星に海はあったのか？
われわれは一歩その答えに近づいたかもしれない。
カリフォルニア工科大学の研究チームは、火星の海に有力な痕跡を発見したと考えている。太古の水域は数十億年前、火星の三分の一までを覆っていたかもしれない。
「火星に水があったかについての議論でもっとも大胆な仮説のひとつは、火星の北半球を覆う海があったのではないか、というものでした」と今回の研究の共同実施者であるかリフォリニア工科大学のローマン・ディビアーズ地学博士研究員はHuffington Postに述べた。ディビアーズは、「Journal of Geophysical Research」誌にも発表されたこのチームの発見は、長く議論されてきた火星の海の仮説を裏付けるものだと付け加える。
「マース リコネッサンス オービター」の高解像度画像を使い、研究チームは、かつての海岸線があったとされるエオリス・ドルサ地域の38平方マイル (約98平方キロ) の地域を調査した。この地域は逆流河川と呼ばれる丘陵の多い地形が特徴で、研究者たちはかつての水流の痕跡を表している考えている。
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火星の海
この概観地図はエリオス・ドルサの中の調査区域 (星じるし) を示している。南側のクレーターの点在する隆起した地域と北側の平坦な低地との境界は、地球上の海盆とよく似ている。エオリス・ドルサ区域 (点線) は大規模な堆積物がいくつもの稜線を形成しており、逆流河川の痕跡と考えられている。(著作権: ディビアーズおよび「Journal of Geophysical Research」誌2013年)
研究チームはこの地域の地形と堆積岩の地層に着目し、これらの太古の河川の傾斜を調査して、かつての水の流れがどちら向きであったかを判断しようとした。この水の流れの向きをどう判断するかが鍵になる、とディビアーズは言う。
過去に考えられていたのに反して、水路は合流しているのではなく、逆にいくつもの水路に分散しており、これは水路が三角州の一部で、水流がより大きな水域ー海洋や地域海などーに流れ込んでいたことを示している、とディビアーズは述べる。
科学者が火星に三角州の痕跡を認めたのはこれがはじめてではないが、過去の発見は地理的に閉ざされた地形であった。2010年欧州宇宙機関の「マース エクスプレス」は南半球にある直径64 Kmほどのクレーターの中に三角州を発見したが、この水路が流れ込んでいた水域は大きくても湖ほどのものだったことになる。
しかし、カリフォルニア工科大のチームの今回の研究では、過去の発見とは異なっている。
「エオリス・ドルサ地域でわれわれが発見した三角州の位置と同様の地形は、最低でも10万平方キロの広さを持つずっと大きな水域があったことを示唆しており、さえぎる地形がまったくないことから、もっとはるかに大きな水域であった可能性もある」と研究チームは書いている。
欧州宇宙機関の宇宙船「マース エクスプレス」はこの2月に火星の北半球の平地に大きな海洋が存在した可能性を示す堆積物の痕跡を発見した。まさにカリフォルニア工科大の調査地域があるところだ。
「研究者はかねてから、火星の北半球にある低地は干上がった海底ではないか、という仮説を立ててきたが、いままで誰も決定的証拠は見つけていなかった」と研究の共同実施者であるカリフォルニア工科大マイク・ラム地学部助教授は大学発行の発表記事の中で述べている。
カリフォルニア工科大のチームはさらに堆積物データを分析して彼らの発見を裏付けようという計画だ。しかし現時点では、太古の火星の海はエオリス・ドルサ地域全体を占める10万平方キロ (約3万9千平方マイル) と推定している。
Comparison of exhumed delta in sedimentary rocks on Mars (left) with a modern delta on Earth (right). On the left, a shaded relief map shows elevated, branching, lobate features in Aeolis Dorsa, Mars, interpreted as resistant channel deposits that make up an ancient delta. These layered, cross-cutting features are typical of channelized sedimentary deposits on Earth and here are indicative of a coastal delta environment. (Credit: DiBiase et al./Journal of Geophysical Research/2013 and USGS/NASA Landsat)
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