公明の抑止力期待=企業は「自公過半数が望ましい」多数 自民独走警戒【動向まとめ】

7月ロイター企業調査によると、参院選挙について「自民・公明で過半数」が望ましいと考えている企業が5割弱にのぼり、「自民単独過半数」を望む企業を抑えて最も多かった。自民党に対する公明党の抑制力が必要との理由による。選挙後の安倍政権は憲法改正やTPP推進に注力すると予想しており、企業の要望する法人減税や規制緩和と必ずしも一致しないことも浮き彫りとなった...
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7月ロイター企業調査によると、参院選挙について「自民・公明で過半数」が望ましいと考えている企業が5割弱にのぼり、「自民単独過半数」を望む企業を抑えて最も多かった。自民党に対する公明党の抑制力が必要との理由による。

選挙後の安倍政権は憲法改正やTPP推進に注力すると予想しており、企業の要望する法人減税や規制緩和と必ずしも一致しないことも浮き彫りとなった。

アベノミクスについては、短期的景気浮揚効果も副作用も限定的とみており、政権発足時と比較して、失望もなく予想以上の成果も伺えない。ただ、日本の財政が欧州のような危機に3─5年以内に陥るとの見方が大幅に増え、財政への懸念が強まっている。

この調査はロイター短観と同時に同じ対象企業に実施、調査期間は7月1日から12日まで。調査対象は400社、回答社数は260社程度。

<ねじれ解消期待も、自民行き過ぎに公明による抑制必要>

来る参院選挙の結果について企業の立場からは「自民・公明で過半数」が望ましいとの見方が回答企業の46%を占め、最も多かった。ついで「自民単独過半数」が31%となった。

全体に「政治が安定してほしい」(電機)といった意見が大勢を占めるものの、「自民単独過半数かつ改憲勢力で3分の2以上」との回答は10%どまり。「改憲までは行き過ぎであり、もっと議論が必要」(非鉄金属)などの理由で敬遠された。

「自民単独過半数」と回答した企業では「長期的視野にたった安定的な経済運営」(輸送用機械)を期待する声が多かったが、「自民・公明で過半数」との回答がそれを上回ったのは「自民単独過半数では牽制機能が働くなる恐れがある」(化学)との懸念から、「アジア強硬外交」や「改憲議論」への抑制役として公明党への期待感を挙げる声が多かったためだ。「自民過半数割れで第1党」との回答でも同様の牽制の必要性を挙げる企業が多い。

<次期政権への期待は法人税減税と規制緩和、安倍首相の思惑とずれ>

企業にとって参院選挙後の政権に取り組んでほしい政策は「法人税減税」が最も多く、次いで「規制緩和」、ほかには「中国・韓国との関係修復」などもあがった。

法人減税は「企業の競争力強化や、海外からの投資を呼ぶためにも必要不可欠」(その他製造)とみている企業が多い。投資税減税との違いについて「投資税減税では製造会社が大半の恩恵を受け、サービスなど企業全体の活性化につながらない」(輸送用機器)と指摘している。

規制緩和は「成長戦略の本命」(卸売)と見ている企業が多く、「規制による無駄なコストが競争力を阻害している」(サービス)、「規制緩和で新たな市場や雇用の創出が図れる」(電機)としている。

中国・韓国との関係悪化は「ビジネス環境に大きなマイナス」(電機や紙パルプ)との声が多く、「これを何とかしないと他の重要課題にも悪い影響を与えてしまう」(石油・石炭)とみている。

他方で、選挙後に安倍首相が続投する場合に、首相が重要課題として取り組むと予想する政策は「憲法改正」が最も多く、ついでTPPなど「自由貿易推進」、「規制緩和」の順となった。企業の望む「法人税減税」や「中国・韓国との関係修復」への取り組みを予想する声は少ない。

「憲法改正」については議論がまだ不十分であるため、改正への動きに対し公明党の抑制機能に期待する声も目立つほか、「自由貿易推進」については企業自体の期待が盛り上がりに欠けている。企業が予想する安倍首相の政策課題と企業が望む政策課題にずれが生じていることが浮き彫りとなった。

<アベノミクスの短期的効果も副作用も限定的、財政危機不安高まる>

アベノミクスの短期景気浮揚効果への評価として「かなり大きい」との回答は46%、「あまり大きくない」とみる回答は51%で、1月調査とほぼ変わらなかった。 背景として「消費マインドへの効果は予想以上だったが、投資マインドはあまり改善されておらず、当初の印象と大きく変わらない」(電機)といった指摘が目立つほか、「あくまで短期の政策。実体が伴わないとむしろマイナスになる危険がある」(卸売)との見方もある。

他方で中長期的な副作用についても「あまり大きくない」との回答が61%となり、1月の62%とほぼ変わらず。

ただ、予定通りの消費増税実施を安倍政権としてまだ決断していないこともあり、副作用の一つと考えられる財政再建の遅れに対する懸念は政権発足当初より高まっている。日本の財政状態が欧州のような危機を招く恐れがあるとすればいつごろか聞いたところ、3─5年以内との回答が37%となり、1月調査の25%から大幅に増加、10年以内の発生を予想する回答は1月の57%から68%に増えた。

<米金融緩和縮小、企業活動への影響幅広く>

米連邦準備理事会のバーナンキ議長が金融緩和の縮小に言及したが、縮小開始時期は明確でないながらも、そうした方向転換により、日本企業の事業計画も多岐にわたって見直しの必要に迫られることが明らかとなった。

最も影響が大きいのは「為替の前提」で、回答企業の60%が変化の可能性ありとした。ついで「調達金利の見直し」が23%。そのほか、10─20%の企業が、設備投資計画や国内外の事業計画、輸出入の見通しを見直す可能性があるとした。[東京 19日 ロイター] (ロイターニュース 中川 泉;編集 石田仁志)

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