スパイ容疑者でも「亡命」できるのか? 外国に「亡命」できるのはどんなとき?
米情報当局による監視プログラムを暴露し、米国からスパイ罪に問われている元CIA職員エドワード・スノーデン容疑者の亡命先に注目が集まっている。
同容疑者の落ち着き先としては、当初、ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏の亡命を受入れた南米のエクアドルが有力視されていたが、エクアドルはスノーデン氏の受け入れに関しては消極的な姿勢を示した。その後、滞在中のロシアや南米ベネズエラ、ボリビアなどが候補としてあがっている。
報道によれば、スノーデン容疑者は20数カ国に亡命申請したとされる。しかし申請したからといって、希望が通ると決まったわけではない。彼は米国人だが、もし日本人が亡命を希望した場合、どのようなときに亡命が受け入れられるのだろうか。作花知志弁護士に聞いた。
●基本的には「受け入れ国の裁量」だが、「国際法上の縛り」もある
「国は、国際社会を構成するメンバーとして、それぞれ平等の国家主権を持っています。『亡命を受け入れる権利』は、その国家主権の一つです。つまり、日本人が外国に亡命を希望した場合、その日本人の亡命を受け入れるか否かは、それぞれの国が自由裁量によって決めることができます」
――つまり、その国が認めるかどうかだけが、ポイント?
「いいえ、そうではありません。国際法上の『縛り』があって、その国が亡命を受け入れたくても、無理な場合があります。たとえば、その国が犯罪人引渡条約を締結しているケースです。なお、2013年7月現在、日本が犯罪人引渡条約を締結している相手は、アメリカと韓国の2国です」
――その場合はどうなる?
「日米間の犯罪人引渡条約では、殺人をはじめ、幅広い犯罪がその対象となっています。日本国内でそれらの法律に違反した日本人がアメリカに亡命申請した場合、アメリカは受け入れることができないだけでなく、逆に日本に引き渡す義務が生じます」
――逆に言えば、条約の対象外となる犯罪もあるということ?
「そうですね。このような犯罪人引渡条約が締結されている国の間でも、例外的に『政治犯』については、引き渡す義務を負わない、とされていることがほとんどです。
そのような場合には、犯罪人引渡条約の締約国でも、条約上の義務の例外として、その日本人を日本に引き渡す義務を負わずに、その亡命を受け入れることも許されることになります」
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【取材協力弁護士】
岡山弁護士会、日弁連裁判員本部、日弁連国際人権問題委員会、日本航空宇宙学会、国際人権法学会などに所属
事務所名: 作花法律事務所