福島県南相馬で行われていた除染モデル実証試験を請け負っていた中堅ゼネコンの日本国土開発が、除染の際に生じた汚染水340トンを、農業用水に使う川に流していたことが分かった。
共同通信の調べによると、除染を発注した日本原子力研究開発機構(原子力機構)は「川に流すことを知りながら、排水経路に触れていない国土開発の計画書を了承、地元に提出していた」という。
除染モデル実証試験は、内閣府が原子力機構の福島技術本部に委託し、高線量地域における除染が効果的かどうかを実証するために、2011年から2012年にかけて行われた事業である。この事業を委託された原子力機構は、原子力に関する研究と技術開発を行なっており、もんじゅなどの核燃料サイクルを研究開発してきた独立行政法人。原発事故後は、事故の内容を調査・検討し今後の対策を講じるなどの貢献を目的とした福島技術本部が設置され、除染モデル実証事業のほか、除染技術実証試験事業、環境モニタリング、放射線量率分布・汚染分布調査などを実施している。
この事業においては、庭の除草、表土剥ぎ、高圧洗浄、ブラッシングなどの除染が行われたとされ、除染の際に出た汚染水はバキュームにより回収し、ろ過、吸着、凝集・沈殿を組み合わせて処理を行い、処理前に検出された放射線物質が、処理後は検出限界以下となったと報告されていた。
また、2012年3月26日に行われた「除染モデル事業等の成果報告会」で、除染水がどのように処理されるかと質問があった際、原子力機構は下記のように答えている。
除染水の水処理は。その際の管理基準は。また,発生した高濃度の除去物の処理は。
回答)除染で発生した水(洗浄水)については、側溝に堰を設ける等により回収・処理を行い、放射性物質の濃度などを確認した後に放流しております。水処理については、洗浄水に含まれる放射性セシウムの濃度に応じて、ろ過、ゼオライトによる吸着、凝集沈殿などを実施し、いずれの場合でも放射性セシウム濃度が以下に示す管理基準を満たすことを確認しております。また、水処理によって発生した除去物については、今回のモデル実証事業においては仮置場などでの保管を行っています。
(『「除染モデル事業等の成果報告会」質問・回答集 』より)
しかし、東京新聞が報じるところによると、水処理業者が処理した分とは別の放射性物質を検出した340トンが、側溝を通じて南相馬市内を流れ水田に水を供給する飯崎川へ排水していたとされる。
原子力機構は国土開発の計画書を了承していたと報じられているが、川へ排水する点を想定していなかったのか。
小説家の矢作俊彦氏はGQで除染モデル実証事業が日本原子力研究開発機構が請け負ったことがそもそもおかしいとして、次のように書いている。
自分の不始末を自分で払拭するといえば聞こえはいいが、除染が事業であり、利益、それも莫大な利益が派生する以上、それは自分で起こした火災で焼け太るという構図以外の何物でもない。事実、原子力機構は今回、100億円の事業から28億円の収益を得ている。
(GO『「除染モデル実証事業」の真実は何か?【8】──矢作俊彦、福島県大熊町に飛び込む【中編】』より。2012年11月8日 )
除染モデル実証事業を原子力機構に任せることは間違いだったのか。そうだとすればどのように除染の事業が進められるべきだったのか。「福島県の市町村が行う除染のために国が昨年度用意した復興予算2550億円のうち、6割以上の1580億円が使われず、今年度に繰り越された」という報道もある。除染のあり方が、今一度問われる。
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