■アベノミクスの意外な効果?
海外各紙が、安倍政権の経済政策「アベノミクス」に関して様々な角度から報じている。
【エコノミストによるアベノミクスへの評価】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日本経済とアベノミクスについて、世界のエコノミストを対象に調査を実施した(調査機関6月24日~7月1日、回答者は42人。その拠点は、約半数が日本、3分の1がアメリカ、その他はアジア・欧州)。
それによると、大半のエコノミストは、アベノミクスは日本経済の見通しに対して良い効果を与えているとみている。ほとんどの回答者が、経済成長率が高まるとみている。また3分の2の回答者が、金融緩和策によってインフレ率予想が若干上昇したと答えた。
ただし、今後10年間の実質経済成長率予想は平均で1.28%で、安倍政権が目標としている2%を下回っている。今後2年間の物価上昇率予想も1.28%と、日銀の目標値である2%より低い。
また、多くのエコノミストは、日本の債務状況を懸念している。国債発行を資金の半分ほどとした財政刺激策を行うことで、政府の債務残高を一層膨らませていることや、長期的にみて国債金利が上昇していくことにより、現在の日本の債務構造を継続することが難しくなると述べている。
加えて、景気刺激策を実体経済の成長に結び付けるには、根本的な構造改革が必要であることも指摘されている。
【アベノミクスは自民党にとって追い風に】
フィナンシャル・タイムズ紙は、アベノミクスが自民党にとって追い風となっていることを報じた。
2012年末に安倍政権が誕生した際には、世界第三の経済大国としての再興を、財界を中心に多くの人々が期待した。実際株価は上昇を続けてきた。
対して、前政権の民主党は内部分裂を起こしており、前代未聞の弱体化した状態にある。2大政党制を実現しようとしていた頃とは程遠い。また、「日本維新の会」も、橋下徹共同代表による慰安婦問題についての失言の影響などで支持を失っている。
野党の力が弱まっており、自民党が政権を維持していた「55年体制」の再来を指摘する専門家もいると報じられている。
【サラリーマンの懐への効果は・・・】
一方で、サラリーマンが妻から支給されるお小遣いの金額が、この30年間で最も低い水準にあるとガーディアン紙が報じている。
新生銀行の調査(20代から50代のサラリーマン約1000人を対象に4月に実施)によると、男性サラリーマンの「お小遣い」平均は月額38,457円だった(昼食や同僚との飲み代、趣味などに使うお金を指す)。
バブル絶頂期の1980年代後半では、「お小遣い」は月に80,000円ほどで、高級クラブやタクシーなどに使われていたという。
新生銀行は、アベノミクスの効果はサラリーマンのお小遣いにまでは、まだ恩恵を与えていないと指摘している。ただ、燃料費などの上昇や、2014年の消費税増税などを見越して、サラリーマンが節約を図っているとの見方も示されている。
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