日本の「どぶ板選挙」を描いたドキュメンタリー映画の上映会を、会場の千代田区の図書館が一方的に中止を申し出ていたことを、朝日新聞が報じた。上映会は予定通り、7月2日に開催されるが、図書館側は共催を降りたため、配給会社が単独で主催する結果となった。
映画は想田和弘監督の「選挙」。2005年の川崎市議補選に立候補した自民党公認候補の「どぶ板選挙」ぶりに密着したドキュメンタリーで、2007年に公開された。
朝日新聞デジタルの記事によると、想田監督と配給会社「東風」は、千代田区立日比谷図書文化館の指定管理者「図書館流通センター」との間で5月上旬に上映会の話がまとまり、「参院選の前にこそ見て欲しい」として今月2日の開催が決定。ところが6月下旬、センター側から「参院選前にセンシティブな内容の映画を上映することに千代田区が懸念を示している」と突然、センターが上映中止を通告してきたという。
監督側が「中止の経緯を公表する」と抗議すると、センターは参院選後の開催を持ちかけ、監督側が再度断ると、東風の単独での開催に決まったという。この結果、当初は上映料と謝礼計6万円を図書館から東風に払うはずが、逆に会場使用料とチラシの刷り直し費用など約12万円を東風が負担することになったという。
記事の中で、千代田区図書・文化資源課の担当者は「指定管理者が共催に入れば区の事業とみられる。特定の政党を支持している映画という誤解を受けかねないと思ったので、気をつけた方がいい、とセンター側には言った」とし、区側から中止を求めた事実はないとしている。
問題となった上映会と上映後のトークショーは予定通り、2日18時15分から、日比谷図書館で開催される予定。想田監督は千代田区に対し、公開質問状と抗議文、さらに2日のトークへの参加要請を自身のブログに掲載。
7月1日の記事で、監督は自身の考えをこう語っている。
「ものを言いにくい雰囲気。これが社会の隅々にまで充満している。その雰囲気を打破する唯一の方法は何か?タブーなく語ることである。逆に、語ることを自主規制すれば、ものを言いにくい雰囲気に加担することになる。
僕は問題の所在を明らかにし、オープンな議論を巻き起こすためにも、今回の経緯を公表する必要があると判断した。その決断に東風も賛意を示した。指定管理会社の皆さんには申し訳ないという気持ちもある。しかし、彼らも一度は中止の決定をした主体だ。一定の責任は感じてもらいたい。
7/2の日比谷図書館での上映後のトークでも、この問題について語りたいと思う。個人の責任を追及するつもりは一切ない。そんなことより、問題提起をしたい。語ることはタブーだという雰囲気があるが、そのタブーこそが問題だと思うのだ」(「観察映画の周辺 Blog by Kazuhiro Soda」)
【※】読者の皆さんは「表現」をめぐるこの問題について、どう考えますか?
■関連リンク
・朝日新聞デジタル「選挙記録映画、共催図書館『中止を』単独上映へ」
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