最低賃金はいくらになるのか――。
2013年度の最低賃金(時給)の目安を決める厚生労働省の審議会(中央最低賃金審議会)が2日始まった。安倍政権はアベノミクス効果を最低賃金の引き上げにつなげたい考えだが、負担が増える経営側は慎重な姿勢を示す。ここ数年は最低賃金アップが続いており、この流れは続くのか、注目される。
最低賃金は、企業がこれより低い賃金で従業員を働かせると違法になる最低限の金額。時給で示され、都道府県ごとに異なる。現在は全国平均で749円。最低賃金額は毎年、労働者と経営者の代表、有識者の3者でつくる中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)で議論される。ここ数年は大幅な引き上げが続いており、2008~12年度までの5年間では7~17円ずつ引き上げられた。
2日の審議会に出席した田村憲久・厚生労働相は次のように述べ、自ら賃上げを要請した。大臣が直接要請するのは2010年度の民主党・長妻昭厚労相以来、3年ぶりだ。
「成長の好循環を実現するという趣旨に沿った引き上げが図られるよう審議をお願いしたい」
(時事ドットコム 2013/7/2 20:04)「すべての所得層の賃金を上げないと、景気回復の原動力の家計が息切れし、景気が腰折れしかねない」
「2%の物価上昇を上回る賃金上昇が必要」
(朝日新聞デジタル「最低賃金、アップ続く? 政権圧力に経営側反発 厚労省審議会」2013/7/3)
円安の影響で燃料が高騰、身近な食品も次々と値上がりし、アベノミクス効果の恩恵を受けていると感じにくいのが現状。デフレ脱却を果たすためにも最低賃金の引き上げが必要だとの声が上がる。安倍政権が6月に閣議決定した新たな成長戦略「日本再興戦略」でも下記のように最低賃金の引き上げが明記された。田村厚労相の要請はこうした方針を受けたもので、最低賃金のアップでアベノミクス効果をアピールするねらいがある。
○持続的な経済成長に向けた最低賃金の引上げのための環境整備
全ての所得層での賃金上昇と企業収益向上の好循環を実現できるよう、今後の経済運営を見据え、最低賃金の引上げに努める。その際、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援を拡充する。
(「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」)
一方、負担増となる経営側はこの流れに反発する。特に中小企業にとっては、賃上げが経営を圧迫し雇用を減らすとの懸念も強い。朝日新聞デジタルによると、2日の審議会を終えた経営側の委員は、「コメントすることはない」と厳しい顔つきで会場を後にしたという。
最低賃金をめぐっては、最低賃金で働いた場合の収入が、最低限の生活費として設定される生活保護の給付水準を下回る逆転現象も問題になっている。昨年9月の厚労省の発表によると、北海道、宮城、東京、神奈川、大阪、広島の6都道府県でこの逆転現象が生じている。ただ、生活保護費の減額が8月から始まるため、最低賃金の議論にも影響を及ぼしそうだ。
パートや派遣社員など非正規労働者は年々増加しており、雇用者の4割近くを占める。年収200万円未満で働く人たちも1千万人を超える。最低賃金アップが続くのか、それとも――。審議会は今月下旬ごろ、引き上げ額の目安を厚労相に諮問する。