自衛隊がPR戦略に力を入れている。製作協力したドラマや映画が人気を呼び、自衛隊監修のDVDや戦車のおまけも登場。尖閣諸島や竹島をめぐる領有権の問題や、北朝鮮のミサイル危機に加え、憲法改正や国防軍創設を掲げる安倍政権の誕生で、現実の世界における存在感も増している。みなさんにとって、自衛隊とはどんな存在?
DVD「よくわかる!陸上自衛隊~陸の王者!日本を守る戦車の歴史~」はオリコンの週間ランキングで総合首位に躍り出た。その人気の一因は、特典についている「『不肖・秋山優花里の戦車講座』出張版」だ。主音声は男性のナレーションだが、副音声では女子高校生が戦車に乗って戦うアニメ「ガールズ&パンツァー」のキャラクター、秋山優花里の解説を聴くことができる。朝日新聞デジタルの記事には以下のように書かれている。
先月の発売1週間で1万5千枚以上が売れ、オリコンの週間ランキングで総合首位になった。カルチャー・教養DVDが音楽や映画などを抑えて首位に立ったのは、オリコンがランキング発表を始めた1999年以来初めてという。制作したリバプールは「アニメファンによる上積みは予想していたが、ここまでとは」。
(朝日新聞デジタル 2013年6月25日18時54分)
陸自が製作に全面協力し、安倍晋三首相が4月にイベントで「10(ヒトマル)式戦車」に乗ったことも注目を浴びたようだ。
また、航空自衛隊が製作協力したドラマ「空飛ぶ広報室」のモデルとなった航空幕僚監部広報室のブログは、自衛隊のお堅いイメージを打ち破り、ソフトな語り口で仕事内容を紹介している。
朝日新聞デジタルによると、東日本大震災での復興活動などで、自衛隊のホームページのアクセス数は5年前に比べて2倍近くに伸び、中央調査社の信頼感調査では、自衛隊への信頼度は2000年3月の3(最高は5)から、昨年度は国会議員や教師を抜いて3.7でトップになった。
すっかり社会に認知された自衛隊という存在。現実の脅威が増す中、こうしたソフトPR戦略の効果もあって、国民の自衛隊への信頼は高まるばかりだ。一方で、憲法改正をめぐる世論の動きとあわせ考えると、一連の流れの「深読み」ができなくもない。朝日新聞デジタルの記事は、纐纈厚・山口大学副学長の次のようなコメントを紹介している。
「高支持率の安倍政権が続く間に、憲法改正や国防軍創設など、『これまで出来なかった宿題』を片付けたい、との気持ちも透けて見える。熟議なしにこうした流れができ始めていることを危惧する」
(朝日新聞デジタル 2013年6月25日18時54分)