東京都議会議員選挙で自民・公明両党が圧勝し、7月の参院選でも勝利して、ねじれ国会の状況が解消される可能性が高まった。「決められる政治」が現実となり、秋の臨時国会では成長戦略関連の法案が相次いで成立する公算が大きくなっている。
一方、消費増税の実施判断と財政健全化の推進という「二律背反」の課題について、安倍晋三政権がどのような決断を下すかが、今後の大きな政治課題となってきそうだ。
<自公全員当選の衝撃>
23日投開票となった東京都議会選挙では、自民党が59議席を獲得して第1党に復帰し、公明党も23議席を確保し、ともに全員当選して両党で過半数の64議席を大きく上回った。
共産党が倍増の17議席を獲得し第3党に躍進。みんなの党が1議席から7議席に大幅増を達成した。
一方、民主党は43議席から15議席に減らして第4党に後退し、東京維新の会も橋下徹・日本維新の会共同代表の慰安婦問題をめぐる発言が響き、2議席に終わった。
都議選の結果は、直後の国政選挙に大きな影響を与えたケースが多く、2009年は民主党が第1党に躍進し、その後の衆院選で政権交代が実現した。参院選と重なった2001年には「小泉ブーム」で都議選、ともに自民党が圧勝した。
<参院選、自民単独過半数の声>
7月21日に予定される参院選に向けて、自民・公明両党は、都議選を弾みに攻勢をかける構え。景気回復の実績と、政策実現には衆参両院で多数が異なる「ねじれ」の解消が不可欠だと訴えていく。
大勢判明後に安倍首相は「半年間の政権運営の実績に一定の評価をいただいた」と述べ、参院選に向け「一日も早く多くの人に景気回復を実感してもらえるよう全力を尽くしていきたい。実績を得るなかで参院選の勝利を目指す」と決意を語った。
公明党の井上義久幹事長は、重点課題として「政治の安定」をあげ与党での過半数獲得が不可欠とした。
実際、永田町関係者からは、野党第1党の民主党が衆院選大敗の後遺症から立ち直っておらず、第三極も分裂状態であるため、参院選で自公が圧勝し、与党の過半数を回復して、衆参のねじれを解消するとの見方が広がっている。与党内では、自民党単独での過半数も視野に入る、との見方も出てきた。
<ねじれ解消で、秋は成長戦略の法案化に弾み>
このため参院選後の政局では、自公が衆参両院での過半数を背景に、成長戦略の実現を旗印に法案成立を図っていく構図が浮かび上がりそうだ。
秋の臨時国会は「成長戦略実行国会」(安倍晋三首相)と位置付けて、成長戦略の具体化を図っていく。
メーンシナリオとして、9月末に任期満了となる党役員人事に合わせて内閣改造を断行。10月に臨時国会を召集して「産業競争力強化法」を提出し、投資減税などの実現を図る日程が、政府・与党内で想定されている。
<消費増税判断、政権の大きな課題に>
その一方、消費税引き上げ問題が、政権の大きな政策選択の課題となってくる。4─6月期の国内総生産(GDP)の結果などを見て、2014年4月からの消費税8%への引き上げを決断することになる。
安倍首相の周辺には、消費増税が堅調な個人消費などに冷水をかけ、税収増に貢献しないとの声があり、延期を求める意見もある。他方、8月に中期財政計画をまとめ、中期的な財政再建への道筋を示すことも固まっている。
消費増税延期と財政健全化の推進は、なかなか両立が難しい。この課題に安倍首相がどのような決断を示すのか、参院選後の政局の最大の課題になる可能性がある。[東京 24日 ロイター]