あなたはもう28歳を過ぎていて、自分より若いのに非常なやり手で、大きなことを成し遂げている人を見ると、激しい自己嫌悪に陥りがちな人間だろうか。もしそうなら、トレーシー・ブリット氏の華々しい活躍を取り上げた「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」紙の記事は読まないほうがいいだろう。
28歳の女性であるブリット氏は、82歳の大物投資家ウォーレン・バフェット氏が最も信頼を寄せる側近の一人だ。
ブリット氏は、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業してすぐ、バフェット氏が経営するバークシャー・ハサウェイ社で、同氏の財務アシスタントとして雇われた。
「その後の4年間で、(彼女のキャリアは)さらに花開き、バフェット氏に最も近い側近の一人として頭角を現したばかりか、バフェット氏の2840億ドル規模のコングロマリットに属する4つの企業で会長を務めている」と、WSJのアヌプリータ・ダス記者は紹介している。
WSJの記事は、ブリット氏のことを少しも「女性秘書」扱いしていない。彼女が会長を務める企業がもたらす数十億ドルの売上高や、バークシャー社が行った大規模買収案件のひとつで彼女が果たした役割について詳しく取り上げている。
また、ブリット氏は就職面接でも非常に賢明だったようだ。バフェット氏と同じく米中西部の農場で育ったブリット氏は、就職面接でバフェット氏と面会した際に、トマトとトウモロコシをバフェット氏に手渡したという。
ブリット氏と同業の女性の中には、他にも、29歳かそれより若い年齢ながらウォール街で非常に高い地位を獲得した人たちがいる。
Forbesが発表した2012年版「30 Under 30」(30歳未満の注目すべき30人)リストの金融業界版には、自身が設立した運用資産6億5000万ドルのヘッジファンドArbalet Capital Management社を経営するジェニファー・ファン氏(29歳)、ゴールドマン・サックス社でマネージング・ディレクターを務めるルーシー・ボールドウィン氏(28歳)、プライスウォーターハウス・クーパース(世界最大級の会計事務所)のパートナーであるミリアム・クライン氏(29歳)、モルガン・スタンレー社でバイスプレジデントを務めるヘイリー・ロックリー氏(28歳)などが名を連ねている。
WSJはブリット氏を、バークシャー社で「最も影響力のある」女性の一人と評している。また、バークシャー社は女性とマイノリティを積極的に活用しているS&P企業100社のリストで、2012年に100位に入っている。[WSJの記事によれば、同社は、13人の役員のうち3人が女性で、傘下企業81社のCEOのうち女性は5人]。
バフェット氏は、大きな議論を巻き起こした「Fortune」誌2013年5月20日号のコラムの中で、ビジネスにおける女性の成功を支援することの倫理的・経済的メリットを強調した。「米国が、すべての市民から優秀な人たちをくまなく採用するようになればなるほど、生み出される製品とサービスは素晴らしいものになる」とバフェット氏は書いている。
ブリット氏の成功によって、今後は、バークシャー社でも他の企業でも、バフェット氏のアドバイスに従おうと考える幹部が増えることだろう。
[Margaret Wheeler Johnson(原文) 日本語版:佐藤卓/ガリレオ]
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