お膝元でのデモ、プーチン政権は信頼を取り戻せるか?
12日に祝日「ロシアの日」を迎えたロシアでは、皮肉にもプーチン政権への根深い反発が露わとなった。モスクワでは1万人規模とも言われるデモ行進が行われ、「プーチンなきロシア」を求めて人々が抗議した。
海外各紙は、信頼を失う政権の様子と、その苦肉の策とも言える最近の行動を取り上げている。
【抗議デモで、政治犯の釈放求める】
モスクワでは、昨年5月の反政権運動などで拘束された「政治犯」27人の無罪を求める抗議デモが行われた。現在は16人が服役中だという。
拘束された人々の中には、フェミニスト・パンク・ロック集団「プッシー・ライオット」のメンバーの他、初めて抗議活動に参加したような一般人までいるとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。一般人までが政治犯として捕まったことは、人々への見せしめであり、将来的なデモ活動の抑制を狙っているのだろうと同紙は推測している。
ハフィントン・ポストでも、大勢の市民がデモ活動に参加したことを取り上げられた。2011年と12年の下院選や大統領選時の10万人規模の反発に比べると小規模ではあるが、1年以上前の事件に対する反対運動の規模としては想定範囲を超えるものであり、根深い反発を表していると報じている。
デモ行進を率いていたのは、ロシア政府やプーチン大統領を批判する反政権ブロガーのアレクセイ・ナワルニー氏だったと各紙は報じている。同氏はプーチン氏側近のソビャニン・モスクワ市長の対抗馬として、次期市長選への出馬が話題となっている。
一方ソビャニン氏は、2年後の選挙を今年9月に前倒しして、与党からではなく無所属として出馬する意向を明らかにしているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。与党のマイナスイメージを出来る限り払拭し、個人としてモスクワ市民の信頼を得ていきたいと意気込んでいるようだ。
世論調査によると、4月時点で与党を「詐欺師と泥棒の集団」と考える人は51%で、2月の40%よりも増加している。今後、政権に対する国民の反発が強まることを予想して、少しでも勝算が残るうちに市長選を行おうとする動きに焦りが感じられると同紙は指摘している。
【人民戦線により、名誉挽回となるか】
モスクワ市民が抗議の声を挙げる一方で、プーチン氏は「ソ連崩壊以来、困難な時代を乗り越えて民主主義や人権尊重、法の原則に基いて国が発展の軌道に乗ってきた」ことを讃える演説を行ったとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
さらに、フィナンシャル・タイムズ紙によると、プーチン氏を支持する社会運動体「全露人民戦線」の本格的な稼働開始が発表されたという。人民戦線は、2011年に与党「統一ロシア」が中核となり結成したものの、その実態は曖昧だった。
それがこのたび、「国民と政府のコミュニケーションを助け」「統一ロシアの代役にもなりうる」社会運動体として改めて旗揚げされたようだ。権力のために戦わない点が政党とは異なると主張している。
しかしメディアでは、プーチン氏が信頼を失い続ける与党に代わる権力基盤として活用する組織に育てていくとの憶測も報じられている。苦肉の策とはいえ、未だ強力な権力を持つプーチン氏が画策しているだけに、その効果は予想がつかないと言えるだろう。
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