TICAD V開幕、何故アフリカなのか、試される日本

6月1日~3日に第5回アフリカ開発会議(TICAD V=ティカッド ファイブ)が横浜で開催される。TICADとは、Tokyo International Conference on African Developmentの略で、アフリカの開発をテーマに議論が行われる…

6月1日~3日に第5回アフリカ開発会議(TICAD V=ティカッド ファイブ)が横浜で開催される。TICADとは、Tokyo International Conference on African Developmentの略で、アフリカの開発をテーマに議論が行われる。

1930年の第1回以降2年近く、日本が主導し、国連や国連開発銀行(UNDP)、世界銀行と共同で開催している。5年に1回の首脳級会合に加え、官僚級の会合も開催。1日から始まる第5回目のTICAD Vには、今回はじめてアフリカ連合委員会(AUC)も共催に名を連ねた。

AUCは、アフリカ54カ国・地域が加盟する世界最大級の地域機関であるアフリカ連合(AU=African Union)の執行機関だ。アフリカの政治的・経済的統合の進展を目的として活動しているAUが、日本主導の国際会議の「共催者」となることで、単なる日本からの支援という意味合いで終わらず、アフリカ諸国と手を取り合って共に歩もうとする意味合いが強くなった。

今回のTICAD Vには、アフリカ約50カ国がから大統領級の代表者が出席し、また80以上の国際機関、そして各国のNGOが集まる見込みとされている。また、この機会を利用して、安倍首相はアフリカ首脳級との「マラソン会談」に臨み、各国との関係強化を図る。 

アフリカ諸国は、人口が爆発的に増えると予測されており、「最後のフロンティア」とも呼ばれている。今後人口が衰退する日本からアフリカを見ると、市場、資源調達先、投資先としてのアフリカは魅力的に映る。今後アフリカとうまくやっていくことが日本国内企業の発展につながる。

5月10日に開かれた、参議院の政府開発援助等に関する特別委員会の中で、TICAD V関連予算について岸田文雄国務大臣は下記のような回答している。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、TICADは、日本とアフリカの互恵的な関係を発展させ、国際社会における日本のプレゼンスを向上させる重要な機会だと認識をしております。

 そして、その中でTICADⅤですが、保健、教育、農業分野、こうした分野での支援を推進する、これはまず大事な点だと存じますが、こうした支援と併せて、我が国経済界の要望にこたえつつ民間主導のアフリカによる成長を実現するため、官民連携を通じた対アフリカ貿易投資の促進、この部分を重視していきたいと考えております。

 この支援とともに、対アフリカ貿易投資の促進を重視するという観点から、インフラ整備そして人材育成、この二つが重要だと認識をしております。このインフラ整備と人材育成と併せてビジネス環境の整備に資するアフリカ支援策を検討していきたいと考えております。また、TICADⅤ、本会合ではアフリカ首脳と日本企業との対話の機会を設けるなど、日本製品のブース展示等を実施する予定にしております。

(参議院 第183回国会 「政府開発援助等に関する特別委員会」第3号議事録 平成25年5月10日)

また、これらの経済的視点からだけではなく、政治的にも、アフリカと協力することが国際的な日本の立ち位置として望ましいのではないかと、朝日新聞デジタルが下記のように説明している。

50を超える国があるアフリカは、国連などの国際機関で存在感(そんざいかん)が大きい。日本の当時の目標(もくひょう)だった国連安全保障理事会(あんぜんほしょうりじかい)の非常任理事国(ひじょうにんりじこく)選挙などを考えれば、アフリカと仲良くすることが日本の利益になると考えたんだ。日本が国際的責任を果たしていると発信する意味もあった。

朝日新聞デジタル「アフリカ開発会議って、なに?(ニュースがわからん!)」より。2013年05月27日)

そのような意味合いを含めてのTICAD Vの開催。初日の内容を時事通信は下記のように報じている。

安倍晋三首相は開会式で基調演説し、今後5年間で総額最大3.2兆円(320億ドル)のアフリカ支援を民間と協力して実施する方針を表明。アフリカからの留学生1000人に日本企業での就業体験の機会を提供する「安倍イニシアチブ」も打ち出す。 

 官民で3.2兆円の支援策には、1兆円超の政府開発援助(ODA)も含まれる。具体的には、道路や送電網などのインフラ整備に、ODAを通じて6500億円を投入。人材育成では、今後5年間で、安倍イニシアチブによるものも含め3万人の産業人材を育てる構想も発表する。

(時事通信「安倍首相、総額3.2兆円の支援表明へ=アフリカ開発会議、1日開幕」より。2013/06/01-06:46)

しかしアフリカに熱い視線を送っているのは日本だけではない。中国はアフリカに対して、日本の額をはるかに超える額の支援を送っている。産経ニュースは中国とアフリカの状況について、下記のように報じている。

 中国とアフリカの貿易総額は1662億ドルに上るが、日本とは300億ドルだ。投資は中国の31億7000万ドルに対し、日本は4億6400万ドルにとどまる。

 日本のアフリカ向け政府開発援助(ODA)が年間18億ドルであるのに対し、中国は3年間で200億ドルだ。中国は開発のためのヒトもカネも自国から持ち込み、地元に何も残さないことが多く、「新植民地主義」の批判もある。

(産経ニュース「アフリカ開発会議 日本らしさで関係強化を」より。)

ブルームバーグによると、アフリカに圧倒的に進出している中国に対して、日本大学 青木一能教授は次のように語ったと報じている。

外務省が国際通貨基金(IMF)のデータを基に作成した資料によると、アフリカ諸国との2011年の貿易額で、日本は約278億ドルにとどまり、約1386億ドルの中国に5倍近く差をつけられている。青木氏は「中国との量の勝負は無理だ。日本ができることは量ではなくて質だ」と強調する。

(ブルームバーグ「政府:アフリカ開発会議開催へ、中国巻き返し-安倍首相は分刻み会談」より。 2013/05/31 12:43 )

今回の会議で日本はどこまで成果をあげられるのか、注目の集まる6月の始まりとなる。

なお、会議の様子は、USTREAMなどで公開される予定だ。

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