ワシントン発――米国では現在、食品に遺伝子組み換え食品(GMO)の表示を行っていないが、同国上院は5月23日(米国時間)、州レベルでの表示も許可することはできないとの決議を再び下した。
今回、反対71票、賛成27票の圧倒的多数で否決された農業法の包括的修正案は、遺伝子組み換え食品の表示を義務付けるわけではなく、単に州ごとの判断に任せるという内容だった。
法案を起草したバーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員(民主党から支援を受ける無所属議員)は、決議を受けて「われわれが本日議論した概念は、常識的なものであり、過激なものではない」と語った。「EUを含む世界の数多くの国々では、遺伝子組み換え作物が原材料に使われているかどうかを確認してから食品を購入することができる」
同議員の地元バーモント州およびコネチカット州では、遺伝子組み換え食品の表示を義務付ける法案を可決した。しかし、地元関係者は懸念を抱いている。食品規格基準を設定するのは連邦政府であるため、モンサントなどの大手バイオテック企業が、そうした法案を可決した州政府を訴える懸念があるのだ。上院で否決された修正法案は、各州が独自に表示を義務付けられる点を明確化したものだった、とサンダース議員は語る。
サンダース議員側は、遺伝子組み換え食品の表示を義務付けている国は世界64カ国に上ると指摘した。米国で表示が義務付けされている食品原材料は3000種以上あるものの、遺伝子組み換え作物はそのリストに含まれていないと同議員は述べる。
しかし、農業委員会議長を務めるデビー・スタビナウ上院議員(ミシガン州選出)は、修正法案はそもそも「農業法案として不適切」であり、表示義務は科学的に不適切であり、健康的な食品を望む風潮にも逆行すると反論した。
「消費者が必要とする食品表示を定めるのは食品医薬品局(FDA)であり、今回の修正法案は、その科学的根拠に基づいた決定に介入するものだ」と、スタビナウ議員は語っている。
同議員はさらに、「世界的に見れば、遺伝子組み換え作物は、病気や害虫に対する優れた抵抗力、高い栄養、数々の発展途上国で起こる干ばつに対する耐性を備えていることを忘れてはならない」と述べ、ゲイツ財団のような研究団体が飢餓を克服できる新しい技術を開発していると賞賛した(そうした取り組みに、ラベル表示の禁止がどんな影響を与えるかは不明だが)。
米国で市販されている大豆やトウモロコシ加工食品のほとんどは、遺伝子組み換え農産物を含んでいる。サンダース議員は昨年も同種の法案を提出したが、同じく否決されている。
同議員は23日、今後も同様の努力を続けると述べた。「バーモント州民および米国民は、自らが食べる食品に何が含まれているかを知る権利がある」と、同議員は声明で述べている。
[Michael McAuliff 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]
関連記事