東京都教育委員会は23日、東京都内の公立学校130校で昨年度、児童や生徒らに体罰があったと認定し学校名を公表した。体罰調査で学校名を公表するのは異例。理由について朝日新聞デジタルは「『体罰は深刻な状況』とみる都教委は、学校や教職員らの意識を高めることで再発防止を狙う」と伝えている。
調査は都内の公立小中学校と都立高校、特別支援学校2184校が対象。校長による教職員への聞き取りや、児童生徒に対して質問用紙を配布し、昨年度の体罰の実態を調べた。
都教委が発表した「都内公立学校における体罰の実態把握について(最終報告)報告」によると、「体罰」と認定したのは146校182人。このうち、体罰があった学校として都立高校28校、区市立の中学校71校、小学校31校を公表した。
都教委は具体的な体罰の状況について、次のようにまとめている。
1.行為者別では、中学校の教職員によるものが最も多い(69校92人)。
2.場面別では、中学校及び高等学校では、部活動中の体罰が多い(75校87人)。
3.回数別では「1回」が最も多い(115人)。
4.傷害を負わせる体罰を行った者は31人であった。
5.体罰に関する認識では、「感情的になってしまった」(55校65人)が最も多かったが、
6.「人間関係ができているので許されると思った」(16校18人)というように、体罰を許容する認識を持つ者もいた。
試合に負けた罰として6時間走らせる、部屋に閉じ込め電気を消した上に頰をたたく・・・。都教委が公表した体罰事案を一部紹介する。
<都立保谷高校>
顧問教諭は、野球部の練習試合中や試合後に、プレイのミスに対し、複数回にわたって計8人の部員を足で蹴るなどの体罰を行った。また、試合に負け、「罰走」と称して、36人の部員を、午前9時から午後3時頃まで、昼食をとらせず学校外を50周(約40㎞)走らせた。
<都立日比谷高校>
顧問教諭は、弓道部の合宿中に、禁止していたにもかかわらず、道場の的付近の照明を消して的を射る練習を行った卒業生と部員を叱責し、手のひらで部員1名の頬を1回たたいた。また、校内での練習の際、安全確保を注意しなかった部員1名の頭を手のひらで1回たたく、何度も弓矢を落とした部員1名の足を1回蹴る、射る前の動作が上手くできなかった部員1名の頬を手のひらで1回たたくなどの行為を計5名の部員に対して行った。
<都立本所工業高校>
当該教員は、携帯電話の保存データについて尋ねたところ反抗的な態度をとった生徒を指導した際、部屋のドアを施錠して電灯を消し、手のひらで頬を6回程度たたき、頭突きを1回するとともに、同生徒の携帯電話を折り曲げた後、手の甲で口元を1回たたいた。その際、同生徒に頸椎捻挫の傷害を負わせるなどの体罰を行った。
<都立国分寺高校>
外部指導員は、サッカー部の合宿中、喝を入れるために度々至近距離から部員に対しボールを思い切り蹴って当て、ミーティング中にもボールを蹴って当てた。普段のミーティングでは、体育座りのまま長時間にわたり説教するとともに、上半身のユニフォームを脱がせて説教したこともあった。試合中、度々、「死ね」「川に落ちちまえ」「殺すぞ」などの暴言を吐き、部員の頭、頬をたたいたり臀部を蹴ったりする行為を繰り返し行った。
<都立雪谷高校>
①当該外部指導員は、指導する野球部のミーティング中にトランプをしていた生徒5名を指導した際、右手のひらで左頬を1回ずつたたいた。
②当該外部指導員は、同部のユニフォームをクリーニングせずに返却した生徒を指導した際、右手のひらで左頬を5回たたき、膝蹴りを1回行った。その際、口の中を切る傷害を負わせた。
③当該外部指導員は、同部の練習試合中、集中できずにミスが続き、たるんでいると思った生徒に指導した際、右手のひらで左頬を1回たたいた。
<江東区立第三砂町中学校>
当該教員は、水泳の授業に遅れてきた生徒27名を指導した際、炎天下で熱くなったプールサイドに約30分間正座させ、3名に両下肢又はすねの熱傷の傷害を負わせ、別の24名のすねを発赤させた。
<渋谷区立松濤中学校>
顧問教諭は、バスケットボール部の練習試合で、身が入っていないプレイや普段の指示と異なるプレイなどを行った部員を指導した際、手のひらで頬や頭部をたたく、足の甲や太ももで部員の太ももを蹴るなどの行為を、約6か月の間に20回程度繰り返し行った。
<練馬区立田柄中学校>
顧問教諭は、バスケットボール部の練習試合中にミスをした部員を指導した際、手のひらで顔をたたいた。また、指示や指導をしたとおりにプレイができなかった部員を指導した際、髪をつかんだり押したり引っ張ったりして床に倒す、足を蹴る、手のひらで頬をたたく、襟をつかんで振り回す、胸ぐらをつかんで引き倒すなどの行為を行った。このような行為を平成24年度に、18回程度繰り返した。
※都教委が公表した体罰事案について、内容を追加しアップデートしています。
都教委によると、今後「部活動指導の在り方検討委員会」で総合的な対策を検討するほか、7月には都内全公立学校で体罰防止研修を行うという。調査は来年度以降も実施される予定だ。
「異例」と報じられた今回の発表。体罰があった学校名の公表をめぐっては、佐賀県武雄市が昨年2月に公表している。
今後、他の自治体でも体罰のあった学校名は公表すべきでしょうか。