道頓堀に巨大プール構想 課題は山積み

「道頓堀に長さ1000メートルのプールを造る」。そんなとんでもない計画が実現に向けて動き始めた...
Dotonbori, Osaka City, Osaka Prefecture, Honshu, Japan
Dotonbori, Osaka City, Osaka Prefecture, Honshu, Japan
Getty Images

 「道頓堀に長さ1000メートルのプールを造る」。そんなとんでもない計画が実現に向けて動き始めた。

 今年4月、「道頓堀プールサイドアベニュー設立準備株式会社」が発足、道頓堀開削400周年となる2015年の計画実現に向けて活動を開始。地元のうどん店「道頓堀今井」の今井徹氏が社長に就任した。事業計画によると、2015年6月末から9月上旬までの期間限定でプールをオープンさせる予定だ。その前後の期間には道頓堀周辺で音楽やダンス、パフォーマンスなどが見れるイベントなどを開催するという。入場料は1時間3千円以上になる予想。

■巨大プールを「大阪名物」に

 そもそもこの計画は、1970年の大阪万博などを手がけた元経済企画庁長官の堺屋太一氏(大阪府市統合本部特別顧問)が、大阪活性化のための「大阪10大名物構想」の一つとして2012年7月に発表したもの。計画地は、道頓堀川にかかる「戎橋」付近から東西約1キロの範囲。道頓堀川の水質は遊泳に適さないため、川の上に大きな箱状のものを浮かべ、その中に水道水を注入して「世界最長の遊泳プール」を造る計画だ。

 今井社長は「なんば経済新聞」が行ったインタビューの中でプール構想の意義について

道頓堀という繁華街に、シンガポールのリゾートホテルマリーナベイサンズが驚くくらいのものを作れれば、きっと街が変わるに違いないということが趣旨。

と話し、人を呼び寄せる秘訣として、

個人的な思いとしては、なにせとびっきり上等で高級にしたい。プールサイドに自動販売機を置くのではなくて、びっくりするくらいの美人なお姉さんや男前が並んでフルサービスをする。 「シンガポールスリング」ではなく「とんぼりスリング」みたいな独特なモノを作って、「一度道頓堀プールに行って飲んでこないと」、と言ってもらえるようなプールになってほしい。

などを挙げている。

■問題は山積み

 観光客の「道頓堀」へのイメージはどのようなものだろう?「くいだおれ」のグルメの街というイメージもあるが、しつこい客引き、路上にあふれる違法駐輪や放置自転車、あふれるゴミなど、悪いイメージの方が多いかもしれない。

 なんば経済新聞の「道頓堀プールにあなたは入りますか?」という調査によると、結果は「絶対入りたくない」が58.17%で1位、3位の「入りたくない」14.50%と合わせると、7割超の回答者が「プールに入りたくない」と考えているようだ。まずはこの悪いイメージを払拭する必要がある。

 また、伝統行事との兼ね合いもある。大阪人にとって最も重要な行事の一つである「天神祭」のメインイベント「船渡御」。船は道頓堀川も通って行く。天神祭の開催日は7月末でプールがオープンしている時期とぶつかるため、どちらを優先するかという問題もある。

 実現のための資金集めも課題だ。プール計画は民間事業で進めるとして出資を募っているが、総事業費30億円といわれる巨額の資金を本当に集めることができるのかどうか心配なところだ。2ヶ月間も川を占有することによる経済への影響も懸念される。

 そして何よりも、地元・大阪人からのサポートが得られていないというところが一番の弱点。大阪市のホームページには以下のような質疑応答が掲載されている。

【道頓堀のプール計画について】

<質問>

大阪に津波が来て、大水が道頓堀川を遡上してくると道頓堀川の大プールが邪魔になり道頓堀界隈、湊町界隈が大洪水となる事は必定。狭い川に巨大な船を浮かせるような危険なことはやめて頂きたい。この企画に大きな疑問を抱き再考を促したいと痛感します。

<回答>

道頓堀プールについては、平成24年1月25日に開催された第3回大阪府市統合本部会議において、特別顧問より提案があったもので、都市魅力戦略会議の中で民間によるシンボルプロジェクトの一つに位置付けております。マスコミ等で様々な報道がなされておりますが、道頓堀プールについては、民間主体のプロジェクトであり、今後、民間からの具体的な提案を受けて、お申し出の治水上の問題や安全性等についても確認しながら検討を進めていく予定としております。

 確かに、東日本大震災以降、各自治体にとって河川の防災は最優先で取り組むべきものとなっている。震災では東北の各地で津波が川を逆流し、流域に大きな被害を出した。宮城県の大川小学校での悲劇も北上川を逆流した津波によって引き起こされたものだった。プールが設置されている期間に大地震が発生しないという確証はどこにもない。

 大阪は「水都」や「八百八橋」などと呼ばれるほど川の多い街。そのほとんどを町人たちが自腹で架けたとされ、趣向を凝らした橋を造って川のある風景を楽しんできた。中でも「道頓堀川」は大阪のシンボルの一つともいえるほど、大阪人にとって馴染みのある川。川面を覆う人工のプールを大阪人は歓迎するだろうか。

■ツイートでの反応

これもそうだし、天神祭の夜にも船が次々と道頓堀に入ってくるの、現場で見たらホント感動する。しょうもないプール構想のせいで台無しにされたくないなぁ...>大阪府の夏祭り「道頓堀川船渡御」開催news.mynavi.jp/news/2013/05/2...

— GDHグレート・でぃくてーたー・ハシさん (@greatdictator_H) 2013年5月24日

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