ソフトバンクによる米国3位の携帯電話大手スプリント・ネクステルの買収劇に注目が集まる中、ロイター通信が21日、以下のように報じた。
米スプリント・ネクステルは20日、買収合意をしているソフトバンクから、一部条項の免除を受けたと発表した。
これでスプリントは米衛星放送サービスのディッシュ・ネットワークによる対抗買収案を検討できるようになる。スプリント株主の間からは、ソフトバンクに買収条件の引き上げを求める声が上がっていた。
条項免除により、スプリントと同社代理人は、非公表の情報をディッシュに対して開示できるようになるほか、ディッシュとの交渉が可能になる。
(ロイター 2013/05/21 14:42)
すごく欲しくて、あとちょっとで手に入りそうなのに、なかなか最後の一打が繰り出せない――。ソフトバンクの孫正義社長は「長期戦」を覚悟したのだろうか。
スプリントをめぐっては、昨年10月にソフトバンクがスプリント株式の70%を201億ドルで取得することを発表。以来、両社は協議を続けてきたが、話がまとまりかけた段階で、4月15日にディッシュが255億ドルの買収額を提案、真っ向から対抗買収を仕掛けた。ロイターの記事によると、ディッシュは今回の条項免除について、スプリントの資産査定が可能になると歓迎の意を表明したという。
一方、ソフトバンクの孫正義社長は4月30日の記者会見で、「携帯電話のアマチュアであるディッシュよりも、スプリントの価値を高められる」と、自社案の優位性に自信を示した。朝日新聞デジタルが以下のように報じている。
ソフトバンクの孫正義社長は30日の会見で、米携帯電話3位スプリント・ネクステルの買収合戦で改めて自社の優位性を訴えた。ソフトバンクの提案は、1株あたりの現在価値が、米衛星放送大手ディッシュ・ネットワークが出した対抗案を「21%上回る」との試算を公表し、「ディッシュよりも相乗効果が大きい」と語った。
(朝日新聞デジタル 2013/4/30 23:30)
ただ、ロイターの8日の報道では、一部の株主は、スプリントが6月12日に予定する株主総会でソフトバンクの買収提案に賛成票を投じるには、ソフトバンクが買収額を引き上げる必要があるとの姿勢を示しているという。
ソフトバンクにとっては、なかなか厳しい局面となってきた。同社は21日、4000億円の個人投資家向け社債を発行することを決めた。SankeiBizの報道によれば、金融機関を除くと個人向け社債としては過去最大となるという。
スプリントは6月12日に株主総会を開き、ソフトバンクの買収提案を採決する予定。ロイターの報道によると、これまでにポールソンやオメガ・アドバイザーズといったスプリント株主が、ディッシュ案に好意的な考えを示しているという。
ソフトバンクの当初の見立てでは、本来なら7月1日には買収が完了する見込みだったという。買収劇の最終章はまもなく訪れる。最後に笑うのはどちらだろうか。