奨学金を貸し出している日本学生支援機構が、学ばない学生に対して奨学金を打ち切っていることがわかったと、朝日新聞が報じている。
日本学生支援機構から奨学金を借りている学生は、奨学金継続のために「奨学金継続願」を提出する必要がある。その継続願の内容と学業の状態などをもとに、学校側が奨学金の貸与を継続するかどうかを決める「適格認定」をおこなう。
日本学生支援機構のホームページによると、「適格認定」の審査項目は下記の4つ。
(1) 人物について、生活全般を通じて態度・行動が奨学生にふさわしく、奨学金の貸与には返還義務が伴うことを自覚し、かつ、将来良識ある社会人として活躍できる見込があること
(2) 健康について、今後とも引き続き修学に耐えうるものと認められること
(3) 学業について、おおむね標準的に修得すべき単位又は科目を修得しているとともに学修の意欲があり確実に卒業(修了)できる見込があること
(4) 経済状況について、修学を継続するため引き続き奨学金の貸与が必要であると認められること
(日本学生支援機構のホームページ「適格認定・「奨学金継続願」の提出(入力)手続きについて」より。)
この「適格認定」の審査結果は、下記の5種類に分類される。
(1)継続…奨学金の交付を継続します。
(2)激励…奨学金の交付を継続しますが、学業成績の向上に努力するよう激励し又は指導します。
(3)警告… 奨学金の交付は継続しますが、学業成績が回復しない場合は、次回の適格認定時以後に奨学金の交付を停止し、又は奨学生の資格を失わせることがあることを警告し指導します。
(4)停止… 1年以内で学校長が定める期間、奨学金の交付を停止します。ただし、当該停止期間を経過した後さらに1年以内で学校長が定める期間、停止を延長することがあります。
(5)廃止… 奨学生の資格を失うことになります。
(日本学生支援機構のホームページ「『奨学金継続願』の提出(入力)手続きについて」より。)
この学校側から送られた認定状況を元に、機構が奨学金の処置を決めるのだが、朝日新聞デジタルによると、機構の今回の措置は、下記のような手順で行われたとされる。
機構は昨年7月、警告となった奨学生について大学側の審査が適切かチェックするため、初めて自ら「全件調査」に踏み切った。その結果、586人について大学側の判断を覆し「原則として廃止にすべきだ」と判断。昨年12月に大学側に通知した。特別な事情を認めて「停止」とした例も含め、継続希望があっても今年度から貸与を打ち切った。
(朝日新聞デジタル 「学ばない学生、奨学金取り消し 586人、大学の判断覆す 学生支援機構」より。 2013/5/23)
景気悪化などを受けて奨学金が返せないケースが目立っていると言われている。中国新聞は未納返済額について下記のように報道している。
同機構によると、景気悪化などの影響で奨学金を返済できないケースが目立ち、期限を過ぎた未返済額は2011年度末で過去最高の約876億円に上っている。返済に困っている人たちを支援する団体には「延滞金の負担が重い」との声が多数寄せられている。
(中国新聞 2013/5/4)
日本学生機構による奨学金の貸付は、は文科省が国の奨学金事業として実施しているものだ。つまり、税金も投入されているということになる。
文科省の資料によると、この事業について下記のように説明している。
日本学生支援機構の奨学金事業は、
①国が資金を提供し、
②各大学が具体的な奨学金の貸与の手続きを行い、
③日本学生支援機構が総括し、回収業務を行う形で、
いわば、国と各大学、日本学生支援機構が三者一体となって行われている。
(文部科学省「(独)日本学生支援機構(JASSO)奨学金貸与事業の概要」より)
奨学金事業は国を作るという点において大変重要である。しかし、その資金源は国民の税金も入っているということを、学生は認識すべきではないか。