米オクラホマ州オクラホマシティー近郊で20日午後に発生した巨大な竜巻は2つの小学校を直撃し、1校では複数の犠牲者が出た。一方で、児童たちを守ろうとする教師たちの行動が多くの命を救った。米ABCは、竜巻直撃時にブライアーウッド小学校で撮影された動画をレポート。暗闇に包まれたトイレで子どもたちの泣き叫ぶ声が響く中、教師が子どもたちを守り抜く姿を伝えた。
ABCによると、動画は携帯電話で撮影された。子どもたちが身を寄せ合ってトイレに避難していたとき、竜巻が同校を直撃。動画では、暗闇の中で突然、叫び声がかき消されるほどの轟音が響く。
「もう少しで終わるから」。子どもたちの不安を取り除こうと教師が必死に叫ぶ。
「こんなの嫌だ。早く出たい」。
教師は「大丈夫よ、もう少しだから」「大丈夫よ」「頭を下げて」と呼びかけ続けた。また、笛を吹いて取り乱す子どもたちを落ち着かせようとしたという。
22日、ABCの記者とともに現場を訪れた教師の目に飛び込んできたのは、天井や壁が吹き飛ばされ、がれきの山へと変わってしまった1年生の教室。担任教師は子どもたちに覆いかぶさり、身を守ったいう。校庭は跡形もなく、駐車場に止めてあった車は校内へと飛ばされていた。
時事通信は、自らが盾となって児童を守った教師の行動を伝えている。
オクラホマシティー南部のブライアーウッド小学校では教師が児童を教室の奥に集めた上で、体を丸めてうずくまり、本を使って頭を守るよう指示した。
また、児童を机の下にしゃがませ、教師が机の前に並び、飛んでくる破片に対する「防護壁」の役目を果たした。その際、右足に机の脚が突き刺さった女性教諭のヘイリーさんはCNNテレビに「子供たちの前で取り乱すわけにはいかなかった」と振り返った。
(時事ドットコム 2013/05/22 19:41)
同校では、こうした勇気ある教師らの判断や行動により、児童全員が無事だった。
一方、竜巻が直撃したもう1校、プラザタワーズ小学校では7人の児童が犠牲となった。
産経ニュースによると、同校では校内の地下室に逃げた低学年の児童が亡くなった。竜巻の衝撃で水道管が壊れ水浸しになったことによる溺死とみられるという。
被災から一夜明けた21日、プラザタワーズ小では校内の地下室に逃げた低学年の児童らが亡くなったことが分かってきた。高学年の児童は近くの教会へ逃げて無事だったという。地下室は竜巻から身を守ることができる「シェルター」ではなく、竜巻の衝撃で水道管が壊れて水浸しに。一部の児童は溺死とみられ、米CNNテレビなどは「地下室は一瞬にして水の墓場に変わった」と伝えた。
(中略)
プラザタワーズ小にも、児童らと体を密着させて児童を救った教員がいた。救出に当たった救急隊員は、「車の下から引っ張り出された女性教員の下には3人の児童がいた。思わず『よくぞやってくれた』と声をかけた」と話す。
(産経ニュース2013/5/22 21:24)
米メディアによると、2校ともシェルターは設置されていなかった。保護者らから設置を望む声は強かったが、多額の費用がかかるため工事は進んでいなかったという。
子どもたちの命を救った教師たちの勇気ある行動に全米から称賛の声が寄せられている。
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