キユーピー、味の素、ケンタッキー 円安で調達コスト増、値上げ広がる可能性も

アベノミクスにより一気に進んだ円安・株高。輸出産業の業績回復期待や資産効果による高額品消費の増加など、景気回復に向けたプラス面に目が行きがちだったが、ドル円が節目の100円を突破したことで、原材料をはじめとする輸入価格の上昇というデメリットも意識され始めている。
Reuters

アベノミクスにより一気に進んだ円安・株高。輸出産業の業績回復期待や資産効果による高額品消費の増加など、景気回復に向けたプラス面に目が行きがちだったが、ドル円が節目の100円を突破したことで、原材料をはじめとする輸入価格の上昇というデメリットも意識され始めている。

ただ、輸入原材料のコスト高が懸念される食品・外食企業への影響は二極化。海外展開が進んでいる企業は円安がプラスに働く一方で、国内中心に展開する企業では、コストを吸収し切れず、製品価格に転嫁する動きも出ている。一段の円安進行により、今後、値上げが広範囲に広がる懸念も強まっている。

<輸入コスト増を為替換算が上回る>

輸入原材料価格の上昇でマイナス影響を受けそうなのは食品メーカー・外食企業だが、地道に展開してきた海外事業の成果やここ数年の積極的なM&Aや海外進出によって、足元では状況が大きく変化している。現地生産・販売を中心に海外展開を進めてきた企業は、円安が為替換算でプラスに働くようになっている。

味の素

日本を含む31の国と地域で販売を行っているヤクルト本社

このほか、積極的に海外企業のM&Aを繰り広げてきた大手ビールメーカーのキリンホールディングス

<食用油・輸送コストなどの上昇は徐々に影響>

一方、国内を中心に事業を行っている企業にとっては、円安による調達コスト増は徐々に影響を及ぼしてくる。日常品に対する消費者の節約志向は続いているだけに、胃袋の減少・節約志向・コスト高と、逆風は強まるばかりだ。合理化や効率化だけでは急速な円安に対応しきれず、値上げや数量減による実質値上げなどを迫られる企業も増えそうだ。

キユーピー

為替円安がプラスに働く味の素も、グループの冷凍食品会社は円安の影響を大きく受ける。伊藤雅俊社長も「原料輸入も製品輸入もあるため、影響が大きいのは冷凍食品だ。原料高を吸収するために、個数を少なくしてより良いものを作るなど価値を上げる必要があるかもしれない」と述べ、コスト高への対応が必要になるとの認識を示した。

日本ケンタッキー・フライド・チキン

日本ケンタッキーでは、円安進行を意識したわけではないが、穀物価格上昇などを踏まえ、世界的に調達を効率化しようというタスクフォースが立ち上がった。今後、共同調達などを検討していくという。ただ、円安のスピードが速いだけに「100円を超えて120円レベルになると、コスト上昇のインパクトは吸収し切れない。今は価格改定を考えていないが、さらなる円安ならば、考えざるを得ない」と、渡辺社長は話している。[東京 10日 ロイター] (ロイターニュース 清水律子   編集 宮崎大)

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