2016年3月、千葉県立君津亀山少年自然の家にて、2泊3日のキャンプが行われました。参加者は全国各地の小中学生23名とその保護者4名。高校生、大学生スタッフが加わり、総勢60名ほどの人々が集まりました。
子どもの貧困対策センター「あすのば」による「小中学生あすのば合宿キャンプ」です。
このキャンプでは貧困世帯の小中学生の子どもを招き、ボランティアの学生が主体となって、野外炊事でカレーライスを作ったり、ゲームやダンス、キャンプファイヤーをしたり、さまざまな活動に挑戦します。
3日間という短い期間、参加人数にも限りがあります。そんな制約の中、子どもの貧困問題という大きな問題に対して何ができるのでしょうか。
確かに、子どもたちを取り巻く環境を3日間で変えることはできません。でも、参加者の子どもたち、そして主催する学生スタッフにも大きな収穫がありました。
ありのままの自分を受け入れてもらえる自己肯定感
最初は緊張している子どもも、だんだん打ち解けてくると
「肩車して!」
「おんぶして!」
と大学生、高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんに甘えてうれしそうにしています。子どもにはそれぞれ、スタッフの学生が一人付いて、ペアとなって交流を深めました。参加者の中には、親や周囲の大人に甘えることができなかった子どもたちもいます。子どもたちを受け止めようと一生懸命な学生スタッフとのふれあいは大切な体験となり、いつの間にか学生スタッフまでも笑顔になっていました。
「素の自分が出せる、その子の気持ちが自然に表現できるようなことが子どもにとって一番いいんだな」と感じました。(学生スタッフ、三宅正太さん、創価大学4年)
自分にもできた!達成感を自信につなげる
キャンプは日常生活とは違うアクティビティをたくさん体験することになります。キャンプファイヤーや野外でのカレー作りが初めての体験となった子もいました。初めてのことができた、という経験は、大きな自信につながります。
初めてのキャンプファイヤーだったので、ドキドキしました。みんなで火をかこみ、おどって、じゃんけんゲームをしました。ぼくはあすのばのキャンプに参加して、よかったーと思いました。(小6男子)
自分はひとりではない、孤独感からの脱出
キャンプでは「たった3日間の短い時間だけでも、自分を大切に思ってくれる人がいることを実感してほしい」(あすのば代表理事小河光治さん)という狙いがあります。
なじめそうにもなくて、とても不安で胸がいっぱいでした。・・・1日目は少しの人としか話せなかったけれど、2日目には幼い子といっぱい話せてよかった。とてもかわいかった。2日目にスタッフの人に「敬語で話さなくてもいいよ」と言われて内心とてもうれしかった。おもわず泣きそうになってしまいました。(中3女子)
「恩送り」が続いていく社会へ
今回のキャンプには、昨年8月に行った合宿ミーティングの参加者だった高校1年生の女の子が、学生スタッフとして主催側の役割を担っていました。自分とペアとなった年下の子から言われたことに落ち込み、涙してしまうこともありましたが、最後までサポートしようとがんばっていました。
かつてはサポートしてもらう立場の子が、サポートする側になる。「恩返し」ではなく、自分がしてもらったことを他の人にもしてあげる、「恩送り」が生まれています。サポートが必要だった子も、自分はひとりではないことを実感し、自己肯定感を高め、自信をつけていけば、サポートをする側にだってなれるのです。
社会全体で、このような支え合いが自然にできることが必要なのではないでしょうか。このキャンプ自体は、貧困の子どもを支援する小さなモデル事業ですが、このような活動が広がっていってほしいと思います。
子どもの貧困対策センター「あすのば」では、子どもへの直接支援には、経済的サポートと精神的サポートの両方が必要であると考えています。今春に実施にした「入学・新生活応援給付金」は経済的支援であり、精神的支援は合宿キャンプが中核となっています。これから継続的に支援を実施していくためにもみなさまのご支援が必要です。よろしくお願いいたします。
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子どもの貧困対策センター「あすのば」
(あすのばは2016年4月より特定公益法人に認定されました。)
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写真引用: あすのばウェブサイト 小中学生合宿キャンプ
本文引用: あすのば新聞第4号
野口由美子 (ブログ Parenting Tips)