ノマドの進化系「モバイルボヘミアン」とは 〜ワークスタイルではなく、ライフスタイルを中心に住む場所を決める〜

本質は、「大切にしたいことを、最大限に優先して生きる」ということです。

ノマドライフの先駆者として有名な本田直之さんと四角大輔さんが自身のライフスタイルの集大成として出版された1冊。『モバイルボヘミアン 旅するように働き、生きるには』を読んでみて。

モバイルボヘミアンとは

ここでいう「モバイル」とは、iPhoneをはじめとするモバイルテクノロジーのこと。

また、「ボヘミアン」とは、社会の規範にとらわれず、自由で放浪的な生活をする人のことです。

そこに加えて「古い慣習に囚われすぎず、クリエイティブな思考を持つ人」「世の中に流されずに自分の心や信念に従って生きている人」という解釈を加えているそう。

本田さんは一昨年、ハワイ5カ月、日本3カ月、ヨーロッパ2カ月、その他の世界が2カ月という生活を送っていて、四角さんもここ数年は、ニュージーランド6カ月、日本3カ月、その他の海外3カ月というパターン。

つまり、モバイルボヘミアンとは、「仕事のために生きるのではなく、自分の好きなことをライフスタイルの中心に据えながら、旅するように働き、暮らす、自由な生き方」「自分らしくいられる時間をできるかぎり長く持つための方法」であり、「仕事、表現、生活のクオリティを極限まで引き上げるための考え方」です。

「モバイルテクノロジー(デジタルデバイス×インターネット)」を武器にし、いつでも、どこでも、誰とでも仕事ができる状態(場所にも時間にも縛られない働き方)を身につけ、旅するように生きられるようになること。

自分のモビリティを最大限に高めることで、より自分らしい生き方ができるようになると。

さらにいうと、ノマドワーカーを「どこにいても仕事ができる人」とするならば、モバイルボヘミアンはそれに加えて、「仕事とプライベートの境がなくなった状態」のことを指すそうです。

この言葉通り、本田さんは、ハワイを中心に世界を旅しながら、サーフィンやトライアスロン、ワイン、グルメといった自分のやりたいことをやりながら、グルメ本を書いたり、トライアスロンのショップの顧問をしたり、ワインスクールで講師をしたり、仕事とプライベートの境なく生きています。

四角さんも、ニュージーランドでの半自給自足の森の生活を中心に、オーガニック製品のアンバサダーをしたり、登山雑誌での連載、フィッシング・アパレルブランドと商品開発などの仕事をしながら旅するように暮らしています。

四角大輔さん

ミニマム・ライフコスト

本の中で、四角さんは、モバイルボヘミアンとして生きるための1stステップとして、自分の「ミニマム・ライフコスト」を把握しようと述べています。

「ミニマム・ライフコスト」とは、「自分や家族が健康的に生活するために必要な最低限のお金」のこと。

これさえわかれば、「これ以上は無理して稼ぐ必要はない」というラインを知ることができ、ここぞというときに思いっきり攻めることができます。

どうなっても生きていけることを確信した瞬間、人はお金から自由になれると。

例として、フィジー(私は在住11年目)で暮らす場合の「ミニマム・ライフコスト」を計算してみました。2パターン用意しています。1FJD(フィジードル)= 60円として。

(1) 独身の場合 [1カ月あたり]

・フィジー人家庭に居候(家賃・食費込) 600FJD(36,000円)

・バス・タクシー代           50FJD(3,000円)

・ネット・携帯代            50FJD(3,000円)

・雑費                 50FJD(3,000円)

 合計:750FJD(45,000円)/ Month

 1年間だと、540,000円(= 45,000円×12カ月)

(2) 私の場合(夫婦 + 子供1人[2歳児])[1カ月あたり(家族全体で)]

・家賃       550FJD(33,000円)

・食費       400FJD(24,000円)

・光熱費      25FJD(1,500円)

・水道代      5FJD(300円)

・ガソリン代    50FJD(3,000円)

・ネット・携帯代  50FJD(3,000円)

・雑費       50FJD(3,000円)

 合計:1,130FJD(67,800円)/ Month

 1年間だと、813,600円(= 67,800円×12カ月)

実際は、日本に一時帰国したりもしているので、もう少し費用はかかっていますが、最低限の暮らしであれば、年間100万未満で家族3人、フィジーで暮らすことができます。

そう気づくことで、気持ちはラクに、そして、新しいチャレンジをしてみようかという意欲も出てきます。これがミニマム・ライフコストを把握するメリットです。

村の女の子たち@フィジー

ホームプレイス

次に、四角さんは、「ホームプレイス」への移住、を勧めています。

「ホームプレイス」とは自分自身を取り戻すことができ、もっとも安心して暮らせる場所のこと。

これは、自分の生まれ育った土地や、実際の故郷でもないし、働くためだけに住んでいる街でもありません。

四角さんはニュージーランドの原生林に囲まれた湖のほとり、本田さんはハワイの美しい海岸線のビーチ沿いをホームプレイスにし、国境を越えて旅しながら生きているものの、結局、年の半分という長い期間をそこで過ごしているようです。

「住む場所を決める基準はなにか?」と聞かれれば、多くの人が「仕事」と即答するでしょう。「暮らすところ=職場に通いやすい場所」というのが常識でしたから。

しかし、今はモバイルテクノロジーを使いこなすことさえできれば、都会、地方いずれにいても、さらには移動しながらでも仕事ができるようになりました。であれば、住む場所を決める基準はもはや「仕事」ではない、ということになります。

ホームプレイスを選ぶ基準として、「そこで一生暮らしたいのか?」は大前提ですが、他にも以下の基準があるといいます。

(1) 治安がいい(紛争やテロのリスクが小さい)

(2) 英語圏

(3) 自然豊か

(4) 生活費が安い

(5) 住民がフレンドリー

(6) 多くの人が訪れたいと思ってくれる場所

では、私が住むフィジーを例はどうでしょう?

(1) 治安

「もしも第三次世界大戦が起きた時、安全な国トップ10」というランキングにおいて、フィジーは1位です。安全な理由は、「広大な太平洋上に浮かぶ孤島だから」「人口も少なく、外交問題にも中立的で、狙われるような資源もないから」。

スリやひったくり等の軽犯罪は日本よりも多いと思いますが、殺人等の重犯罪は多くはありません。

(2) 英語

フィジーの民族構成は、フィジー系が約6割、インド系が約4割です。それぞれ、フィジー語、ヒンズー語を母国語としますが、国民のほとんどが英語を話します。

しかも、難しい単語を使わず、ゆっくりと話してくれるので、英語ビギナーの方にとっても分かりやすいですね。

(3) 自然

南の島のイメージどおり、自然に囲まれています。

↓ お気に入りは、家から車で50分ほどのところにあるナタンドラ・ビーチ。

ビーチで乗馬もできます

(4) 生活費

ざっくりいって、物価は日本の半分程度です。

以下、参考までに。

・バス代(初乗り)   0.70FJD(42円)

・タクシー(初乗り)  1.50FJD(90円)

・安いレストラン    5 〜 10FJD(300 〜 600円)

・中級レストラン    12 〜 20FJD(720 〜 1,200円)

・ゴルフ(9ホール)  15FJD(900円)

・映画         6.50FJD(390円)

・1日クルーズ     150FJD(9,000円)

(5) 住民がフレンドリー

フィジー人は「世界でいちばんフレンドリーな国民」とも言われます。もっとも、フレンドリーと見るか、馴れなれしいと見るか、その感じ方は人それぞれですが。

初対面でも十年来の友人かのように絡んできます。

南国フィジー。普段はイメージ通り、スローなリズムが流れ、ゆったりしていますが、人との距離を詰めるスピードだけは高速です。

すぐ声をかけ、雑談してきてくれるホテルスタッフたち@フィジー

(6) 多くの人が訪れたいと思ってくれる場所

フィジーは言わずと知れた観光立国。

観光客の約7割はオーストラリアとニュージーランドから来ています。

彼らにとって、フィジーのリゾートでバカンスをのんびり過ごすのが最高の贅沢です。

フィジーは世界のセレブたちをも魅了します。

メル・ギブソンはフィジーに魅了されて約15億円の島を購入。トム・クルーズやビルゲイツ、ブリトニー・スピアーズも遊びに来たり、今月(2017年6月)もミランダ・カーが新婚旅行でフィジーを訪れています。

ボートの上から

こうみてみると、私にとってフィジーは、ホームプレイスとしての基準をクリアーしてくれる場所であるようです。

本田さんは本の中で、これからの時代、自分の仕事をつくるには「オリジナリティの掛け合わせ」が大事だと述べています。

たとえば、「サーフィンを極めたい」という人がいたとします。しかし、それだけを仕事にして生きていくためには、サーファーの中でもトップサーファーにならないかぎり難しいでしょう。

でも、「サーフィン好きな人」が「ハワイ」で「不動産ビジネスをしている」とすればどうでしょう? 「サーフィン好き」という「ライフスタイル」に加え、「ハワイ」という「旅(場所)」と、「不動産経営」という「ビジネス」が掛け合わさった状態です。

ハワイには資産を持っている人が遊びにきます。

その人と一緒にサーフィンをしているうちに仲良くなって、「そろそろハワイに住みたいんで」と相談が。そのときにサーフィンができて暮らしやすい穴場を紹介することができる不動産屋さんだったら、単なるエージェント(代理業)とは違う価値を提供できそうです。

これは実際に本田さんの友人の例なのですが、彼はサーファーとしてはプロでトップになるレベルではないし、不動産エージェントとして大きいわけでもナンバーワンでもない。しかし、その組み合わせによって、不動の個人ブランドと地位を築いているそうです。

本田直之さん

ちなみに、私の場合。

本田さんのいう、「ライフスタイル」+「場所」+「ビジネス」の式に当てはめてみると、

ライフスタイル = 常夏・異文化好き

場所 = フィジー

ビジネス = 語学学校運営(英語教育・異文化コミュニケーション)

という感じになります。

大切にしたいことを、最大限に優先して生きる

モバイルボヘミアンという生き方を構成する要素はいろいろありますが、本質は、「大切にしたいことを、最大限に優先して生きる」ということです。

私にとってそれは、「フィジーで暮らすこと」でした。

本田さんや四角さんと比べては僭越すぎますが、私もモバイルボヘミアン的な生き方に憧れている一人です。

私は機械に強い人間ではないですし、まだまだモバイルテクノロジーを活かし切れているとは言えません。

モバイルボヘミアンの「最先端」ではなく「最後尾」かもしれませんが、世界でいちばん幸せな小さな島国で、大切なことをライフスタイルの中心にして生きることができています。本当に後悔のない生き方は、そこからのスタートなのだと思っています。

モバイルボヘミアン(フィジー支部)の一員として、両氏の背中を大いに参考にしていきたいと思います。

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