シリア難民問題に揺れる世界ですが、気候変動などが原因で生まれる「環境難民」の問題も忘れてはいけません。
太平洋上(赤道付近)に、キリバスという国があります。
33の環礁で構成されており、国土面積は730平方キロ。対馬とほぼ同じ大きさで、人口は約10万人の小さい国です。
第二次世界大戦中には日本軍が占領し、米軍と激戦を交えた地でもあります。現在、国民は魚を獲ったり、コプラを栽培したりと、半自給自足的な生活を送っています。軍隊も持たない平和なこの国で、今、大きな問題が起きています。それは何か?
地球温暖化の影響で海面が上昇していて、平均海抜が約2メートルしかないキリバスは国家が水没する危機に瀕しているんです。
自分が生まれ、育ってきた国が消滅してしまう。それってどんな気持ちなんでしょう?
家族や友達、恋人など、大切な人たちと過ごしてきた思い出の場所が海面下に沈んでいく。胸がしめつけられる想い...
それよりも切実なのは、「そもそも移住させてくれる国はあるのだろうか?」や「移住先がなければ、このまま死ぬしかないのか?」などの不安です。
そんな状況の中、2014年2月11日、フィジーのエペリ・ナイラティカウ大統領がキリバスの首都タラワを訪問して、公式にこう発言しました。
国際社会が温暖化対策に失敗し、海面が上昇し続ければ、キリバスの人たちの一部、もしくは全員がフィジーに移住する必要があるかもしれない。われわれは困っている隣人に背を向けることはない
約10万人のキリバス人を、人口88万人程度の小国フィジーが受け入れると。
フィジー人は困っている人たちを放っておくことができません。「人類みな兄弟」を地でいく国民です。キリバス人にとってフィジーは救世主でしょう。
ビーチでカメラを向けると、こんな技を披露してくれた、おもてなし精神あふれるフィジー人たち
世界で一番最初に沈む国として有名なツバルは、キリバスのご近所さん。人口は約1万人です。2000年、ツバルはオーストラリアとニュージーランドに、環境難民としての受け入れを要請しました。
しかし、オーストラリアは拒否。ニュージーランドは環境難民を認めず、労働移民として年間75人の受け入れを約束するに留まりました。
温暖化の原因の1つは、二酸化炭素を含む温室効果ガスと言われています。それを排出しまくっているのは、オーストラリアやアメリカなどの先進国なのに...
1997年、京都で開かれた国際会議で、排出量の削減を目的とした京都議定書が採択されました。世界190カ国以上がこれを批准。世界で最初に批准した国は、なんと、フィジーでした。98年9月のこと。
オーストラリアは2007年にようやく批准。アメリカは批准せず...
一部の先進国は「地球の環境」より「自国の経済発展」を優先します。だから、ツバルからもキリバスからも環境難民を受け入れることはありません。受け入れると、衣食住の生活費や教育費を国が負担することになるので。
その結果、先進国よりも圧倒的に経済的に貧しいフィジーが責任を負うことに。温室効果ガスなんてほとんど出していないのに...
このナイラティカウ大統領の発言について、フィジー人医師(30代前半の男性)に感想を尋ねると、「困ってる人に手を差し伸べる。それって当たり前のことでしょ? たとえフィジー国民が負担を負うことになっても、それは光栄なこと。逆に、ほかの国がなぜ受け入れないのか、理解に苦しむ。大統領の発言、僕はフィジー人として誇りに思うよ」
キリバスにて、ナイラティカウ大統領はこう続けます。
フィジーも海面上昇に関する問題はある。この危機を協力し合って戦っていこう。最悪の事態になったとしても、あなたたちが難民になることはない。堂々とフィジーに移住できる。キリバスの人たちの魂は場所がかわっても生き続ける
先月、フィジーの首相がツバルに対しても受け入れ表明を行いました。
小国フィジーを僕は誇りに思います。
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【Article】 世界幸福度ランキング1位の国フィジーへの移住。「世界最幸」の4つの秘訣とは?