2015年は国内外で波乱の大きかった1年だったが、ブルームバーグがさらなる波乱を予測させる2016年最悪のシナリオを発表した。
1.原油価格が1バレル=100ドルまで上昇
2.イギリスがEUを離脱
3.米銀行に対するサイバー攻撃
ロシアとイランによってアメリカの金融機関がサイバー攻撃を受ける。金融機関の信用は落ち、連日ストップ安に。
4.EU崩壊
5.中国経済が低迷し、軍事費が増加
6.イスラエルがイランの核施設を攻撃
7.ロシアが国際舞台で成功
プーチン大統領がISとの戦いの合意プロセスでオバマ大統領をまんまと騙し、ロシアに都合の良い条件を引き出す。欧米はロシア制裁を緩和。
8.気候変動の悪化
9.ラテンアメリカの無秩序
10.トランプが大統領に
以上がブルームバーグが予測する2016年最悪のシナリオだ。
非現実的な予測もあるが、現実的に起こりそうな予測もある。具体的には、原油市場の混乱、EUの亀裂&英国のEU離脱、サイバー攻撃、中国の経済悪化、ラテンアメリカの無秩序だ。
ここでは原油市場の混乱、EUの亀裂&英国のEU離脱、中国の経済悪化についてさらに詳しく見ていきたい。
サウジアラビアの国内不安定化
これはサウジアラビアに限らない話だが、原油価格の低迷により財政が悪化。歳出削減により国民の不満が高まる可能性が高い。巨額の財政赤字を穴埋めするため、国際債券市場で資金調達することを決定し、来年はじめには開始するとみられている。
ISISによるテロ
また、ISISが石油施設を強奪し、原油市場が混乱に陥る可能性も否定できない。そうなれば、他中東諸国の治安が悪化し、サウジアラビアは国内の批判を避けるために対イラン強硬姿勢を強めるかもしれない。日本もエネルギー政策を見直す必要が出てくるだろう。
EU内で極右の台頭
テロと移民/難民の流入により、排他主義が高まり、極右の台頭、民族主義が高まる可能性は高い。実際、国境を自由に往来できるシェンゲン協定は見直されつつあり、ハンガリー、ポーランドでは極右政党が存在感を強めている。仏では極右・国民戦線が躍進し、この勢いが続けば党首マリーヌ・ルペンが2017年の仏大統領選挙で選出される可能性もある。難民受け入れを主導してきた独メルケル首相に対しても批判が強まるだろう。
英国のEU離脱
英国は来年6月から2017年4月までの間に、EU残留の是非を問う国民投票が実施されることになっているが、来年中に実施される可能性が高まっている。EU離脱と移民制限を掲げる英国独立党(UKIP)は昨年からの勢いを落としているが、12月17日に公表された英世論調査によると47%が EU離脱支持に賛成している。キャメロン首相がEUに提案しているEU改革論がどう受け入れられるかにも左右されるだろうが、EU離脱は非現実的な話ではない。
中国の経済悪化
中国経済の不透明性は高いが、回復の見通しは立っていない。政府としては不動産バブルのハードランディングだけは避けたい。中国の経済がさらに悪化すれば、他国、特に東南アジアへの影響も大きい。当然、日本にも悪影響となり、既に「爆買い」のピークが過ぎたという声もある。また、1月16日には台湾総統選挙が実施され、最大野党・民進党が政権奪回すると見られているが、民進党の蔡主席は対中政策で「現状維持」を掲げており大きな変化はないだろう。一方、海洋進出は止まらず、米中間、南シナ海周辺国との緊張は高まる可能性が高い。
日本は来年には参院選(もしくは衆参ダブル選)を控えているが、大きなリスクはなさそうだ。米国もオバマ大統領最後の1年で、大統領選で誰が勝つかは予測しづらいが、米国内でのテロなど大きな出来事がない限り、大きな変動はないと思われる。
今年後半から既にそうであったが、来年は中東、欧州が主役の年となるだろう。
(2015年12月26日「Platnews」より転載)