29日、「電波停止」の可能性に言及した高市早苗総務大臣の発言に抗議して、田原総一郎氏らテレビ放送関係者が記者会見を行った。
しかし、既に何度も報じている通り、答弁全文を読めば「第四条の違反に関しては使わない」という回答を求められ、それを否定したに過ぎないし、何度も言及しているという批判もあるが、それは野党議員が何度も質問しているからだ。
欠陥を抱えている放送法
ここで問題にすべきは、高市総務大臣の発言ではなく、放送法の欠陥だ。根本的な問題は、政治的公平性について時の総務大臣が判断するという(文面になっている)ことだ。放送法の内容については別の記事で触れており(関連記事:監視されるべき権力者が監督する異様さー欠陥を抱えている放送制度)、ここで細かくは触れないが、放送法は本来権力から独立するために作られたにも関わらず、現状は権力に依拠する状態になっている。
しかし、なぜか今回の記者会見では、放送法の問題はほとんど言及されていない。
今回の会見が求めている成果がよくわからないのだが、高市総務大臣が謝罪したり辞任すれば満足なのだろうか。仮に辞任したとして、同様の「解釈」をする人が本当にいないと思っているんだろうか。放送法第4条は倫理規定とするのが通説だと主張しているが、法律に書いている以上、それを拠り所にしていると言われても大きな問題があるとは思えない。
放送法の本来の目的は、権力からの独立だが、1952年に吉田茂内閣が効率性という名目で放送局を監督する独立機関であった「電波監理委員会」を郵政省(総務省の前身)に統合し、政府が管理するように改悪されている。個人の問題を問うなら、改悪した吉田内閣だし、放送法の文面上は「総務大臣が政治的公平性を判断する」ことになっているのだから、それを問題視すべきだろう。
6条で規程されている「放送番組審議会」は現在各局の中に存在しているが、委員は恣意的に任命できるし、その権限がどのくらい大きいのかは不明である。
もう一つの問題は電波独占
そして、もう一つの問題は一部の放送局による電波独占である。
政府と国会は当然行政権と立法権を持った権力であるが、電波独占権を与えられた放送局も権力の一部である。軽減税率も同様だが、利益を別の組織に握られれば、どうしても配慮する立場になってしまうのは言うまでもない。
抜本的に状況を変えるべきだと考えるなら、自ら電波オークションを進め、「言論の自由」を担保するべきだと思うが、そこには言及しない。
そういった態度が、国民の利益ではなく、自らの利益を守ろうとしているように見えるのがわからないのだろうか。
第二次安倍政権以降、政府は戦略的にメディアコントロールしようとしているが、メディアがその状況に対応できていないように思える。
こうした状況下では、メディア自体の競争力(=報道力)を高める必要があるが、独占市場では健全な競争は起こらないし、クロスオーナーシップによって互いに批判することもない。もちろん、政治家の言動を批判することは重要だが、政府批判をしにくい状況にあるのなら、批判をしやすい環境を作るために、放送法や電波独占など、抜本的に解決したほうが良いのではないだろうか。
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(2016年3月1日「Platnews」より転載)