【今回の記事はこのブログみたいな記事を本にしてしまった「宇宙までまるわかり!素粒子の世界」の一部を抜粋して、ブログ用に再構成したものになります】
昔、アインシュタイン博士は言いました。「時間と空間は質量によって歪みます。その歪みは重力波となって時空を伝わっていきます。」......時空が歪むってなんなんでしょうか。
時空の歪みと重力の波
アインシュタイン博士が提唱した一般相対性理論、これは4つの力のうちの重力をうまく説明してくれる理論です。それによると、質量を持ったものが、そこにぽつんと存在するだけで、空間と時間(あわせて時空と呼びます)に歪みができます。重ければ重いほど、その歪みは大きくなります。そしてその物体が移動することで時空の歪みは変化して、その変化は光の速さで伝わっていきます。この変化の波のことを、重力波と呼びます。
この重力波、時空の歪みが伝わるものなので、星でも身体でもすべてのものを突き抜けて伝わっていきます。
「時空が歪む」だとか「時空の歪みが伝わる」だとか、正直なところ、いまいち想像しづらいですよね。私もはっきり言って想像できません。
そこでよくあるイメージではありますが、ピンと張ったゴムの膜で例えてみましょう。このゴムの膜が時空だと考えます。そのゴムの上にちょっと重い玉をボヨンっとおいてみるとどうなるか、ゴムは玉を中心にしてビローンと下に向かって伸びてしまいます。これが「質量を持ったもののまわりの時空が歪む」ことに対応します。
次にもう1個、重い玉をおいてみましょう。すると2個の玉はお互いが作ったゴムのへっこみに落ちていくようにするすると近づいていって、最後はゴツンと衝突します。これは「お互いに重力が働いて近づく方向に動いていく」ことに対応しています。
最後に、重い球を手でつまんでゴムの上でぐるんぐるん回してみて見ましょう。ゴム膜はビロンビロン動いて波立って、ゴム膜のはじまで伝わっていきます。これが「時空の歪みが波となって伝わる重力波」というわけです。
重力波で何が見える?
そんな重力波、人類が検出できるような大きさの時空の歪みを発生させるためには、かなりかなり重いものを動かしてやらないといけません。今ここでこの本を振り回してももちろん重力波は発生するのですが、とてもとても検出できるような歪みではないのです。それなら何を動かすのか。そこで、困ったときの宇宙頼みです。
宇宙を見上げてみましょう。宇宙には重い重い天体がいっぱいありますので重力波のもととなるものはいろいろとありますが、一番わかりやすいものが2つのブラックホールがお互いを中心としてグルグル回っているときの重力波です。
そもそもブラックホールはとてもとても重い天体の成れの果てなのですが、このブラックホールがお互いの重力でひっぱり合ってグルグル回っていることがあります。そのときに発生する重力波はとても大きなもので、それがたとえ違う銀河で起こったとしても、地球の実験装置でなんとか観測できると考えられています。
この重力波が見えるとなにが嬉しいのでしょうか。まず、アインシュタイン博士の「一般相対性理論」が正しいかどうか、あらためて検証することができます。
一般相対性理論はGPSなど日常生活で利用されているくらいに普及している理論ですが、それに間違っている部分がないかどうか、確かめることはとても大事なことです。
次に、今までの宇宙の観測は光に頼ってばかりのところがありましたが、その観測に重力波を使うことができるようになります。光では宇宙の晴れ上がり以前の宇宙を見ることはできなかったところが重力波を使えばもっと昔の状態を見ることができるかもしれませんし、ブラックホールのような重い天体を重力波で観察することで今まで見えていなかったものが見えるようになるかもしれません。
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ということで、ちょっと話題になっているアメリカにある重力波観測施設LIGOにちなんで、重力波の記事をあげておきました。アメリカの東部時間11日11時に記者会見をするそうですので、皆さんワクワクしながら夜更かししましょう。
【16.02.12追記】
「重力波みつけたよ!We did it!」だそうです。すごい。太陽の36倍の質量のブラックホールと29倍のブラックホールがぐるぐる回って合体した時にでてきた重力波を見つけたそうです。これから重力波を使ったいろいろな観測が捗っていくんでしょうなあ。すごい。
【こんな感じで素粒子のお話をしているよ。日本の重力波検出器KAGRAちゃんもちょっとだけでてるよ】
(2016年2月11日「HiggsTan」より転載)