安倍総理が消費税を幼児教育の無償化などに回すとしたことに、内閣府子ども子育て会議委員の駒崎弘樹氏は、無償化よりも「全入化」を優先すべきだとし、待機児童の解消だけでなく、夜間保育や病児保育のインフラ整備にまず力を入れるべきと主張した。
私はこれを読んだ瞬間、先日、東京渋谷のスクランブル交差点を車両が暴走したニュースがテレビで何度も放映されたことを思い出した。けが人がでたわけでもないこのニュースを、私が住む新潟県南魚沼市の人がどれだけ関心を持つだろうか。その辺のおばあちゃんに「渋谷のスクランブル交差点」とか言っても、「何かの卵料理かい?」とか聞かれてしまいそうだ笑。
東京の人にとって関心があるからといって、全国民に関心があるわけじゃない。待機児童問題だってそう。待機児童数は全国で約2万6000人。その内の3割以上が東京に集中している。千葉、大阪、兵庫、埼玉などの都市部に多く、逆に富山、石川、鳥取や長野などの地方は0人。新潟も2人だ。要するに、駒崎氏の主張は、地方にいる私からすると、消費税は地方ではなく、都市部に回せと言っているのと同等なのだ。
夜間保育もそう。この辺で夜間に営業しているのはコンビニだけで、夜間に子どもを預けたいという人は少ない。病児保育もそう。人口5万8000人の南魚沼市には病児保育施設が1か所あるが、定員9人が満杯になることは皆無で、利用者は1日平均2人。施設長に話を聞くと、「風邪を引いた時くらい一緒にいてやりたいと思うのか、その日の朝になってのキャンセルが月に50件もあるんです。この地域はじいちゃん、ばあちゃんだけでなく、近所の人が世話したりもしますからね」と言う。
駒崎氏は、平均月2万円の保育料がそこまでの負担ではないと書いているが、それは賃金が高い都市部での話。賃金が低い地方で、子どもが2人いれば月4万円の支出は大きい。それが無償化されれば、「もう一人産んでも大丈夫じゃないか」となり、少子化に歯止めがかかるきっかけになるかもしれない。待機児童も大きな問題だが、こちらでは多くの集落が消滅の危機にさらされている。全国民が払う消費税を都市部の問題により多く費やそうとすれば、さらに地方は衰退していくかもしれない。